≪一生懸命、愛してくれます≫


 私の彼はヘタレです。
 なさけない、と表現した方が正しいでしょうか?
 彼から動いてくれる事は殆どありません。
 そんなだから、私達の仲はあまり進展がありません。

 まったく。
 その性格はどうにかできないのでしょうか?


 初めての方も、そうでない方もこんにちは。火乃子です。
 とはいえ、私のこのお話も今回で最後という事なんですが。
 なので、普段私達がどう恋人らしい事をしているのかをお話したいと思います。


 朝。学校に行く時、茂馬君は迎えに来てくれます。
 ……これは恋人同士になる前からですが。

「かのちゃん、おはよ」
「おはよ、茂馬君」

 荷物が少なくて片手が空いている時はいつも、手を繋いで行きます。
 今でこそ自然に繋いでいますが。
 恋人同士になった頃は全然でした。

 茂馬君は手を繋ぎたそうに、何とか自然に繋げるように手を伸ばしてくるんですが。
 ちょっと触れるとすぐに手を引っ込めてしまっていたんですから。
 それにじれったくなって私から手を繋いだら、その後は茂馬君から手を繋いでくれるようになりました。


 学校ではクラスが違うので、残念ながらお昼時と放課後しか一緒にいられません。
 でもでも!お昼は私の作ったお弁当を二人で食べます。
 茂馬君は私の料理を本当に美味しそうに食べてくれますよ。
 だって昔から一緒にいますから。味の好みは分かっているつもりです。
 だから恋人同士になった時に、お弁当を作っていいか聞いたんです。

「え、かのちゃん、作ってくれるの……?」
「うん。茂馬君さえ良ければ、だけど……」
「あ、あの、かのちゃんが面倒じゃなければ……食べたいな」

 という感じで。


 放課後は一緒に帰ります。
 茂馬君が図書当番の時は図書室で本を読んで時間を潰して。
 たまに寄り道もします。だって恋人同士ですから。
 真っ直ぐ帰るのは勿体ないじゃないですか。
 家に帰ったらメールと電話しか出来ないんですから。


 とまぁ平日はこんな感じです。
 だから休日は二人でお出かけです。


 休日のデートは主にお買い物だという事は前にお話しましたね。
 ですが雨の日はお出かけという気分にはならないので、どちらかの部屋で過ごします。
 ……残念ながら茂馬君は手を出してこないので、ご期待に沿えるようなお話にはならないかと。
 茂馬君はヘタレで情けない以前に、照れ屋さんだと思うのです。
 だって部屋で二人きりになると思いっ切り緊張していますからね。
 だから基本的には勉強しています。

「茂馬君、ココわかる?」
「どれ?……あ、これはこっちの公式を当てはめるといいよ」
「……あ、そっか。ありがと」
「うん。あ、かのちゃんココ教えて?」
「これ?これは現在形を過去進行形にするんだからbe動詞をつけて……」
「あ、そっか。wasをつけて進行形にするんだ」
「そうそう」

 茂馬君は理数系。私は文系です。
 だからクラスが別れてしまったんですが。
 勉強を教えあう時は便利です。
 本好きの茂馬君が理系というのもおかしな話ですが。

 勉強を終えて一息つくと、茂馬君は途端に緊張してしまいます。
 でも、私が傍に行くとギュッと手を握ってくれて。
 最近ではようやくキスしてくれるようにもなりました。
 真っ赤になって可愛いです。

 本当にそれだけなんですが、今はそれだけで十分です。
 だって、一生懸命、愛してくれます。
 茂馬君なりのやり方で。
 茂馬君のペースで。

 例えば優しくされた時とか。
 守ってくれた時とか。
 そういう時が、本当に幸せなんです。
 多分、茂馬君はそれで一杯一杯なんでしょうけど。
 でもいいです。
 そんな所も愛しいと思えるんですから。


 これで私と茂馬君のお話は終わりです。
 ですが、これからも私と茂馬君はゆっくりとお互いの想いを育んでいきます。
 もしかしたら、またどこかでお会いする事もあるかもしれませんね。
 その時はまた、どうぞよろしくお願いします。
 でわ。


=Fin=