咲と直樹が付き合い始めてから数週間。
学校は夏休みに入っていた。
≪初めてのお宅訪問≫
夏休みが始まって数日。
咲が下宿している直樹の実家のリビングに二人でいる時だった。
「咲。今度俺の家に来ないか?」
「え……それって、直樹さんが今住んでるトコ、ですか?」
「それ以外にドコがあるんだよ」
苦笑する直樹に、咲は家に招待されたのが嬉しくなった。
「行っていいんですか?」
「あぁ。この家だとなかなか二人きりにはなれないだろ」
そうして咲は、直樹の家に行く事になった。
「お邪魔しまーす……」
直樹に連れられてきたのは、2DKのマンション。
室内は綺麗に片付いていて、こざっぱりとしている。
「そんなに広くないけど、ま、楽にしてていいから」
そう言われて、咲はソファに腰掛ける。
「咲は紅茶か?」
「あ、はい」
そうして直樹は咲に紅茶と、自分はコーヒーを持ってソファに座った。
「どーぞ」
「ありがとうございます」
「宿題持ってきたか?」
「はい」
一応、直樹の家には宿題を教えて貰うという名目で来た。
まぁ、実際に教えて貰えれば宿題は捗るだろうし。
数学の問題集を開いて、咲は問題と睨めっこする。
「えっと……」
「……咲。ここ、ちゃんと教えただろ?この間のテストにも出し……ってそういえば、期末は赤点スレスレだったか……」
やれやれといった表情で直樹は溜息を吐く。
「だ、だって……」
「まぁ、責任の一端は俺にもあるからな。休み中にちゃんと理解できるように教えてやる」
「……ごめんなさい」
「いーや?ちゃんと見返りは貰うから」
ニヤリと口の端を上げて笑うその直樹の表情に、咲は嫌な予感がする。
「見返、り……?」
「そ。今は二人っきりだし、な……」
そう言って直樹は咲の耳にフッと息を吹き掛ける。
「……っ!」
途端に咲の背筋はゾクッと粟立ち、何とも言えない気分になる。
お願いだから耳は止めて……!
そう思ってキッと睨み付けるように直樹に視線を向けると、今度はキスをされた。
甘く、とろけるような優しいキス。
「……じゃあ、授業と同じように説明と問題を繰り返すから。間違えたら耳で、正解ならキスな」
「……え?」
一瞬、直樹の言葉を聞き間違えたのかと思った。
だが。
「耳が嫌ならちゃんと説明聞け。んで、少しずつキスに馴れていこうな?」
ニッコリとした笑みでそう言われ、咲は少しだけここに来た事を後悔した。
何だか夏の暑さよりも、直樹さんの熱にやられそうです……。
=Fin=
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・生田 咲(いくた さく)……月羽矢学園高等部一年。直樹の実家に下宿中。
・早坂 直樹(はやさか なおき)……月羽矢学園高等部数学教師。
好きなカップリングアンケートで一位になった二人です。
こちらはフリー配布になっています。ご自由にお持ち帰り下さいませ☆