≪新たな決意≫


 学校が違うというのは。
 それだけ不安も沢山あって。
「……智ちゃんてさ」
「なぁに?礼君」
「やっぱり……モテるの?」
 ついつい聞いてしまった。

 俺の彼女の智ちゃんは。
 黒髪ストレートがとてもよく似合う女の子。
 弓道をしている時は凛としてて。
 普段は真面目で大人しそうな女の子。
 そんな智ちゃんが、男に目を付けられない訳がない!
 事実彼女は、俺と付き合う前にも告白を受けた事があるらしいし。

「そんな……私なんか全然モテないよ!」
「でも告白はされた事あるんでしょ?」
「う、うん……でも、璃琉羽もよく告白されてるよ?」

 璃琉羽さん。彼女の友達の一人で、おっとり系の女の子。
 でも最近、ちょっとそれも違うかな?と思ってたりするんだけど。
 ……うん、まぁ彼女もモテそうなタイプかも。

「でも、彼女は彼氏の宗方さんが同じ学校にいるし……」
「……もしかして礼君、心配なの?」
「……うん」
 図星を突かれた礼義だったが、カッコつけてもしょうがないので頷く。
「あの、ね。最近は大丈夫なの」
「?何が?」
「呼び出し受けたら、朱夏ちゃんにこっそり付いて来て貰ってるから」
 そう言ってニッコリ笑う智に、礼義は目を瞠る。
「よく思いついたね、そんな事」
 だが、その後に発せられた言葉に、礼義は脱力した。
「思い付いたっていうか……昔がそうだったの。告白されると、お兄ちゃんか忠のどっちかが必ずいつの間にかこっそり付いて来てたから」

 智ちゃんの兄弟は重度のシスコンで。
 兄の仁と弟の忠の二人には、前にかなりの迷惑を被った。

「……智ちゃんてさ」
「?」
「かなり最強の守護者に護られてるんだね……」

 今更ながらに礼義は、自分の立場を実感した。
 まるで、屈強な兵に護られた姫に恋する平民。

「凶悪な魔物に護られた、捕らわれの身の姫を救い出す勇者なら良かったのに……」
「何の話?」
 でも。
「……智ちゃんは、俺の事好き?」
「えっ!?……う、うん、好き……」
 頬を真っ赤に染めてそう言う智に、礼義は嬉しそうに笑う。
「うん。なら平気。大丈夫、どんなに強い守護者に護られてても、攫っちゃえばいいんだから!」
「え、え?」
 事情がまだよく飲み込めてない智を、礼義はギュッと抱き締める。
「俺の事、ずっと好きでいてね。そうしたら俺、頑張れるから」
「うん……?」
「大好き、智ちゃん」

 ずっとずっと、一緒にいたいから。
 どんな事があっても、負けないという決意を新たに。


=Fin=