今日のデートはいつもとちょっと違う。
 何故なら。
 智ちゃんがお弁当を作ってきてくれるからっ!


≪お弁当持って≫


 それはいつもの部活の帰り道。
「礼君。今度のデートの時、お弁当作っていっても、いい?」
 今度のデートで動物園に行こうと話が出た時に、智がおずおずとそう言ったのだ。
「マジで!?それって、バレンタインの時に言ってたよね。うわーすっげー楽しみっ!」
 そう興奮しながら物凄く嬉しそうに言う礼義に、智は慌てて言う。
「そ、そんなに期待するような物作れないよ?本当に普通のしか……」
「大丈夫。智ちゃんが作ってくれるのならどんなのでも、それこそ好き嫌いなく平らげるから!」
 自信満々にそう言う礼義に、智は苦笑する。
「そういえば礼君は嫌いな食べ物とか、ある?」
「しいたけ」
「じゃあしいたけは入れないね」
「ありがと」
 そう言いながら二人は笑う。
 好き嫌いなく平らげると豪語した割に、礼義はあっさりと嫌いな物を即答したからだ。
「あーでもデートの日が楽しみだなー」
「本当に期待しないでね?」
 そんな事を話して。


 そうしてデート当日を迎えた本日。
 礼義は朝から浮かれまくっていた。

 智ちゃん、どんなお弁当作ってきてくれるんだろう?
 定番は卵焼きに唐揚げだよなー。
 タコさんウィンナーとか入ってたりして。

 そんな事を考えながら待ち合わせ場所で待っていると、智がやってきた。
「礼君、お待たせ」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。それお弁当?俺が持つよ。重いでしょ」
 そう言って礼義は智の持っている、大き目のトートバッグを持つ。
「あ、ありがとう」
「じゃあ行こうか」
「うんっ」
 そうして二人は電車で近場の動物園まで行く。


 動物園では様々な動物を見て周り、二人は大いにはしゃいだ。

「見て、礼君!ライオンの赤ちゃんカワイイ〜」
「本当、ちっちゃくて可愛いね」

「あ、お昼過ぎからキリンの餌やりできるって」
「もしかしたら頭撫でれるかもね」
「ね、ね、餌やりやろ?」
「うん、じゃあ後でまたこよっか」

「あ、智ちゃんあそこ。猿のお腹に子猿がしがみ付いてる」
「え、どこどこ?あ、本当だ〜」


 そんな感じで園内を回り、お昼。
「ね、そろそろお弁当食べない?」
「そうだね。この後キリンの餌やりに行くし、早めに食べちゃおうか」
 そうして二人は園内に設置されている休憩所でお昼にする。
 テーブルにお弁当を広げて、智は蓋を開けながら言う。
「本当に大した事ないから……」
 だがお弁当の中身を見て、礼義は感動する。

 智ちゃんの手作りお弁当……っ!

 前もって礼義が予想していた三品に加え、他にも色とりどりの品がいくつかあった。
「うまそー……食べていい?」
「う、うん。礼君の口に合うといいんだけど……」

 そんなもん、俺の口の方を合わせるから大丈夫!

 そんな事を思いながら、礼義はおかずを一つ箸で摘んで食べる。
「美味しい……」
 お世辞抜きで、智のお弁当は美味しかった。
「本当?よかったぁ」
「どれも美味しい。毎回作って欲しいぐらい」
 礼義がそう言うと、智ははにかんだような笑みを浮かべた。

 そうして午後もまた引き続き園内を見て回って、帰り道。
「今日は楽しかった。智ちゃんお手製のお弁当も食べれたし」
「じゃあ、また今度作るね」
「え、マジで?やった!」
 そう喜ぶ礼義に、智は嬉しそうに微笑んだ。


=Fin=