≪再会≫
「音々子ちゃん!」
「え……もしかして、幸花ちゃん!?」
あの一件から数日後。幸花は怜人に連絡を取って音々子に会わせて貰った。
だが、事情を知らない音々子は困惑するばかりだ。
「……ちょっと、どういう事?何で怜人が幸花ちゃんと知り合いなワケ!?」
そう突っ掛かる音々子に対し、怜人は実に飄々と答える。
「だって俺の従妹だし」
「……嘘!」
「嘘吐いてどーする。本人にも聞いてみろ」
「幸花ちゃん、本当?」
音々子に真剣な表情で聞かれて、幸花は少し言いにくそうに答える。
「本当、なんだけど……」
すると音々子は驚きに目を瞠り、至極真面目に言う。
「……怜人と幸花ちゃんが血縁なんて、絶対信じられないっ!」
そう叫ぶ音々子に、怜人は意地悪そうに言う。
「ついでに言うなら、俺は向日の分家筋。彼女は本家。どちらにしろ親戚だ」
それを聞いて益々、音々子は信じられないという顔をした。
「……だって幸花ちゃん、物凄くいい子なのに。捻くれた性格の怜人と親戚なんて、ありえないっ!」
するとその言葉に怜人がムッとする。
「……オイ音々子、ちょっと待てコラ。誰が捻くれてるってぇ?」
「怜人」
即答で答える音々子に、怜人は低い声を出す。
「ねーねーこー?……ふーん。そういう事言うんだ……これは一度思い知らせてやんないとなぁ」
ニヤリと口の端を上げ、明らかに雰囲気を変えた怜人を見て、音々子は途端に慌てる。
「え゛嘘、ちょっとタンマ!ごめん、謝るから許してぇ!」
「ダーメ。さーて今日はどうしようかなぁ?」
「ねー幸花ちゃんからも何とか言ってよ。助けて、お願いっ!」
心底楽しそうな顔の怜人と、心成しか青ざめた顔の音々子。
だが幸花はそれを見て、クスクスと笑い出す。
「幸花……ちゃん?」
「ごめんね?何だか音々子ちゃん、怜人さんとお似合いだなぁって思って。あの頃より生き生きしてるし、楽しそう。本当に大切にされてるんだね」
そう言われて音々子は顔を真っ赤にする。
「そ、そうかなっ?そう見える……?」
「うん、幸せそう」
「……ありがと」
嬉しそうに頬を染める音々子に、今度は幸花が聞かれた。
「幸花ちゃんは?今、幸せ?」
「うん。龍矢さんが、傍にいてくれるから……」
幸花も音々子も、幸せだった。
愛する人と、一緒にいられて。
「これからもまた、時々会おうね」
「うんっ」
=Fin=