≪仲良しトリオの雑談≫
それは、ある日の昼休みの会話だった。
「ねーぇ?そういえば朱夏ちゃんも智ちゃんも男兄弟いるのに、性格は全然違うよねぇ?」
璃琉羽に言われて二人は顔を見合わせる。
「璃琉羽は一人っ子だっけ?まぁいくら兄弟が男っていっても、同じようになるとは限らないでしょ」
「朱夏は確かお兄さんだけだよね?私のトコは上も下もだけど」
智がそう言うと、璃琉羽は苦笑して言う。
「……何か、智ちゃんの方が男の子みたいに育ちそうな気がするのは気のせい?」
「よっぽど大事に育てられたんだね〜」
その朱夏の指摘に、智は変な顔をする。
「違うよ……むしろ邪魔されてたもん」
「「邪魔?」」
面白くなさそうに言う智に、朱夏と、璃琉羽の声が重なった。
「だってあの人達……シスコンなだけだもん」
シスコン。
その言葉に二人は納得したように頷く。
「あー……大事にされすぎちゃった訳ね……」
「礼君も大変だろうね……」
「私もそう思う……」
しみじみとそう言って三人は溜息を吐く。
頑張れ、礼君。
丁度その頃。
礼義本人がくしゃみをしたとかしなかったとか。
「そういえば朱夏ちゃんのお兄さんって、年幾つ離れてるの?」
璃琉羽がそう聞くと、朱夏は少し考えてから言う。
「えっと……九つかな」
「結構離れてるね」
「うん、馬鹿兄貴だけどねー」
その“馬鹿兄貴”発言に、璃琉羽と智は呆れる。
「……朱夏ちゃん……馬鹿って……」
「もしくは愚兄」
「……そんなに……その、出来の悪い?お兄さんなの?」
兄をそんな風に言う朱夏に、おずおずとそう聞いてみると。
「ううん、弁護士」
「凄いじゃない、それ!……でも何で愚兄……?」
「お人好しの熱血バカだから」
「それっていい事なんじゃないの……?」
「甘いわね。あの人は皆のお兄さんやってんのよ。親が共働きで家に帰っても誰もいないっていう子の遊び相手になって、自分と同い年との友達付き合い疎かに
してたんだから。ま、大体相手にする子は男の子だったから?私も一緒に遊んでてこんな性格になっちゃったけど」
「……」
「それに結構モテるのに、愚鈍だから相手の好意に気付かないのよ。……っていっても、兄貴のお人好しな性格を、自分に好意を持ってるから優しくしてくれるんだって
勘違いしてるバカ女が多いのも事実なんだけどねー」
「……そうなんだー……」
ケラケラと笑って言う朱夏に、二人はもう何も言えない。
「あ、そうだ。智のシスコンの兄弟なんだけど」
「う、うん」
「あんまり干渉してきてしつこいようなら、もういっその事“愚兄”“愚弟”って呼ぶとか」
「……考えとく……」
まさか後日、自分がその呼び名を使う事になるとは、この時の智は思ってもみなかった。
=Fin=
智が本編で“愚兄”“愚弟”と呟いた真相。