≪気になるのは≫
「ねぇねぇ、遊菜って葵センパイといつもどういうデートしてるの?」
美術部の活動中、そう言って時音は遊菜に話しかけた。
実はずっと興味があったのだ。
堅物だと思っていた貴寿と、それを苦手としていた遊菜が付き合っている今、一体どういうデートをしているのか。
「先輩と?うーん……よく行くのは、デパートとかで開催されてる美術展とか」
「美術展……へー」
「後は……植物園に行ってスケッチとか」
「デートでスケッチ……」
「あ、そうそう。この間、先輩がよく利用する画材屋さん教えてもらったんだけど、取り扱ってる画材道具の種類も豊富で穴場なんだぁ。今度時音にも教えてあげるね?」
「……うん、ありがと」
そう言いながら時音は内心、聞かない方がよかったかもと思う。
今時のカップルのデートって、こういうものだっけ……?
「私、最近ちょっとね?先輩と同じ美大に行こうかなって考えてて。だから絵の勉強とかにもなるし、先輩とのデート楽しみなんだ」
「そっか」
そういう理由で、楽しいならいいと思う。
普通のデートとはちょっと違うみたいだけど。
二人の雰囲気が作れてるって気がするから。
「時音は?久我君とどういうデートしてるの?」
遊菜にそう話を振られて、時音はちょっと考えてから答える。
「え、私?私はまぁ……映画とか、道行の部屋で過ごす、とか?」
「そうなんだ。やっぱり人によってデートの内容も違うんだね」
そう言う遊菜に時音も、そうかも、と思った。
気になるのは、他人のデートの内容。
でもそれは、比べれるモノなんかじゃない。
=Fin=