≪バイト〜咲ちゃんは見た〜≫
「じゃあ遊菜センパイ。お先に失礼しまーす」
「はーい。咲ちゃんも気をつけてねー」
咲が始めたコンビニのバイト。そこには同じ月羽矢学園の甲斐遊菜が働いていた。
咲と遊菜のシフトは少し被っていて。
「おはようございます。あぁ、生田さんはもう上がり?」
「あ、はい。お先に失礼します、葵センパイ」
「お疲れ様」
咲と入れ替わりに葵貴寿がシフトに入る。
最近はこの流れが三人の日常になっていた。
「あ、忘れ物」
その日、一度外に出た咲は、忘れ物に気付いて裏口から取りに戻った。
「すいませーん。その辺に……」
バイト中の二人の邪魔にならないように咲は小さく声を掛ける。
だが。
「ちょ、センパイ!お客さん来たらどうす……っん」
「平気。スタッフルームは店内からは死角になってて見えないし、客が入ってきたら音鳴るから分かるだろ?」
「もう……」
そんなやり取りが聞こえてきて。
……何か、物凄く入り辛いんですが……?
「……よし、表から客として入ろう。うん」
咲は真っ赤な顔でそう呟いて、一人で頷いていた。
=Fin=
咲ちゃん回れ右(笑)