≪勉強会≫


 今日は咲、桃花、幸花の三人で勉強会だ。
 場所は、咲がお世話になっている下宿先の早坂家。


 そもそも何故こんな事になったのかというと。

「たまには三人で勉強会でもしない?」
 そう言い出したのは桃花だ。
「勉強会?」
「うん。明日のお休みの日に」
「どうしたの?桃花がそう言うなんて珍しいね」
 いつも凍護とラブラブな桃花が、休日に誘ってくるのは本当に珍しい事だ。
「……あのね。明日は凍護君に用事が出来ちゃって。だから……」
「そっか。でも遊びに行くんじゃなくて、何で勉強会?」
 そう首を傾げる幸花に、桃花は泣きそうな表情で言う。
「だって〜。何か今回、やけに宿題多くない?」
 そう言われて、咲と幸花は宿題の量を思い出す。
 言われてみれば確かに、何だかいつもより多い気がする。
「……あ。そういえば今回のテスト、いつもより平均点が下がったって、先生達言ってたよね」
「だからかなぁ?どの先生も、考える事は一緒って事?」
 のんびりとそう言う二人に、桃花は言う。
「だから一緒に宿題片付けよ、ね?」
 頼み込んで言う桃花に、二人は苦笑しながらも頷いた。

 そうして、場所をどうしようか、となった時に下宿生活に興味を持った桃花と幸花の二人が、咲の所を希望したのだ。


「……あー……もう集中力切れたぁ……」
 勉強を開始してから数時間。
 流石に限界がきたのか、咲がそう言って机に突っ伏したのを切っ掛けに、桃花と幸花も勉強の手を止めた。
「そろそろ休憩しよっか」
「賛成ー」
「私、何か飲み物貰ってくるね」
 そう言って咲が席を立ち、すぐに飲み物を持って戻ってきた。

 勉強の合間の息抜きに話す事といえば、もっぱら恋の話だ。
 それぞれに恋人はいるし、咲と幸花に至ってはその対象が現役の教師だ。
 ここなら大っぴらに話しても問題はないので、三人は安心して話し出す。

「そういえば、ココって早坂先生の実家なんだよねぇ」
「やっぱりさっき会った人って、早坂先生のお母さん?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、咲ちゃんは相手の親公認なんだー」
 桃花がそう言うのに、咲は顔を真っ赤にさせる。
「こ、公認ってそんな大げさな……」
「でも、付き合ってる事は知ってるんだよね?」
「う、うん……でも、私の親はまだこの事知らないから……」
「それなら早坂先生の方は大変だね」
「……うん。そ、それより二人はどうなのよー」
 話を逸らすように言われた言葉に、幸花が答える。
「……私も龍矢さんも、両親がもういないから」
「あ……ごめん、ね?」
 申し訳なさそうに言う咲に、幸花は笑顔で言う。
「いいの。……私と龍矢さんの場合、元々従兄妹同士だし、生きてたらきっと歓迎されてたんだろうなって思うんだ」
「そうなんだ……私と凍護君は高校生同士だからなぁ。まだ親公認とかまではいかないかな」
「その内なる予定?」
「だといいな」
 桃花の弱気発言に、咲と幸花は驚く。
「どうかしたの?」
「何かあったの?」
 心配そうにそう聞いてくる二人に、桃花は明るく言う。
「大丈夫だよ、私と凍護君は。ただ、凍護君が不良だっていう噂を、ウチの親がどう思うかなってだけで。……まぁ、認めさせるけど」
 その言葉に三人はお互いにフフッと笑った。
「認めさせるって……何か凄い自信」
「その意気なら大丈夫な気がする」
「ありがと」
 そうして三人はもう少し他愛もない話をして。
「じゃあ残りの宿題、片付けよっか」
「うん」
「そうだね」
 宿題を片付ける為に、再び机に向かった。


=Fin=


生田 咲(いくた さく)……月羽矢学園高等部一年。「シークレット・スペース」に登場。

花咲 桃花(はなさき とうか)……月羽矢学園高等部一年。「気付いて。」に登場。

向日 幸花(むかひ さちか)……月羽矢学園高等部一年。「reliance」に登場。