≪お宝写真〜朱夏ちゃんの逆襲!?〜≫
朱夏の昔の写真で一騒動(?)あった数日後。
「璃琉羽。ちょっとイイモノあるんだけど……」
そう言って朱夏は一枚の写真を持ってきた。
「何の写真?」
璃琉羽は写真を受け取りながらそう聞く。
「いいから、いいから」
その朱夏の表情は、何かを企んでいるような意地の悪い物で。
璃琉羽と傍にいた智は、一体何が写っているんだろうと思いながら、恐る恐る写真を見る。
するとそこには。
「きゃ〜っ!可愛い〜っ!え、これって緋久君だよねっ!?」
「こっちの女の子は朱夏?可愛い〜」
「うん。ちょっと昔の写真整理してたら、ね」
そこに写っていたのは、幼稚園か小学生といったぐらいの朱夏と緋久ともう一人、男の子が写っている写真だった。
「これ、何の写真?」
写真の中の朱夏はとても誇らしげな笑顔なのだが。
隣に並ぶ緋久ともう一人の男の子は、泣き顔だった。
「これね、駅前のデパートでやってたヒーローショーの後に取った写真なんだ」
駅前のデパートでは、小規模ではあるが戦隊物のヒーローショーが時々行われる。
本物の俳優は来ないが、子供達にとっては憧れのヒーローが目の前で戦う、というだけで嬉しいものだ。
「でもこれ、何で緋久君は泣き顔なの……?」
璃琉羽の疑問はもっともだ。
ヒーローショーを見た後なら、子供達は普通、笑顔だろうから。
「それね、宗方は敵の怪人が怖くて泣いちゃったのよ」
「……え?」
「ほら、デパートとかのヒーローショーって、お客さんの中から何人か人質役の子供をステージに上げるでしょ?それに選ばれて」
「それで泣いちゃった、の?」
「うん」
「……こっちの男の子は?」
「宗方に懐いてた一つ年下の子なんだけど。一緒にステージに上がると思ってた宗方が泣き出しちゃって上がってこなかったから」
「……朱夏は……?」
「敵の怪人挑発してたら宗方の代わりにステージに上がる事になって。攻撃してみろって言うから思いっきりやったらかなり効いてたみたいで。
……中の人には悪い事しちゃったわねー」
「……」
朱夏の説明に、璃琉羽と智は何と言っていいのか分からなくなる。
泣いてしまった緋久ともう一人の男の子の微笑ましい話というべきか。
……それとも朱夏の武勇伝というべきか……。
そんな事を思っていると、そこに愁と緋久がやってきた。
「璃琉羽、ちょっと辞書貸して欲しいんだけど……」
「お前らさっきから何見てんだ?」
そう言って愁はひょいと璃琉羽の持っていた写真を取り上げる。
「「な……っ!?」」
それを見た愁と緋久は同時に驚いた。
ただ、愁は少し嬉しそうに目を瞠って。
緋久は顔を引き攣らせていた。
「絹川っ!どっからこんな物……っ!」
「別にぃ?たまたま見つけたから、璃琉羽に見せてあげたら喜ぶかなって」
朱夏のその表情はニヤニヤと笑っていて。
緋久は肩を落とした。
絶対確信犯だ……。
緋久は、この間の朱夏の写真を璃琉羽に貸した事の仕返しだと思って諦めた。
「……で?この写真の話って……」
「……聞いた」
「そっか……」
その事に愁は疑問に思って聞く。
「写真の話?そういや朱夏だけ満面の笑顔だな」
「それ、ヒーローショーで敵の怪人挑発してたらステージに上げられて、思いっきり攻撃したらかなり効いたみたいで。それで……」
「朱夏……お前なぁ……」
女の子のする事じゃないだろ……。
愁はそう思わずにはいられなかった。
「で、これは璃琉羽に進呈」
「え、貰っていいの!?」
「ちょ、待て絹川!こんな情けない写真……」
見せるだけならまだしも、それを彼女である璃琉羽に渡すなんて冗談じゃない。
そう思って抗議しようとした矢先。
「……貰っちゃ、ダメ?」
璃琉羽に可愛くねだられて、緋久は言葉に詰まった。
そうして。
「……璃琉羽が、どうしても欲しいっていうなら」
「やった。ありがとう、緋久君。朱夏ちゃんも」
結局、緋久は折れた。
まぁ自分も内緒で愁に何枚か写真渡したし。
そう思って。
=Fin=
前回朱夏は、中等部の頃の写真を愁に見られたのが、余程恥ずかしかった模様(笑)