その日は、突然やって来た。
「やっと見つけた!逢いたかったよ、僕のロザリオ姫!」
その言葉にクロスとロッドは足を止め、声のした方を振り向く。
すると、少し高い岩の上に、灰色掛かった黒髪の男が立っていた。
「嘘……」
「……誰?」
青ざめた顔をするクロスと、何が何だか分からないロッド。
だが、クロスがロザリオ姫だという事を知っている、という事は、少なくともリアス国の関係者だ。
早急に事態を把握して、対策を練る必要性がある。
「また誰かが連れ戻しに来たのかよ……っ」
「ううん、状況はもっと悪いと思う……」
「え?」
「だって、あれは……」
そうして、次の言葉にロッドは絶句する。
「彼はアントス=ディア=フィンネル。私が結婚する筈だった、フィンネル国の王子……」
「……何ぃーっ!?」
――穏やかな午後の昼下がり。人通りの無い峠での出来事だった。