ある日、一件のメールが届いた。
『現在高校二年の蒼と言います。メル友を探しているんですが、良かったらお友達になりませんか(^-^)』
よくある文面。
でも、私はその人に興味を持った。
≪メル友≫
最近、迷惑メールの多さに嫌気がさして、思い切って変えたアドレス。
どうせだから自分の好きな言葉にしちゃえ、とばかりに、大文字・小文字・数字に記号、全部ごちゃ混ぜにして、最大文字数全部使い切ったアドレス。
そのおかげで迷惑メールはピタリと止んで。
だから、これが知らないアドレスからの初めてのメール。
何でこの人はこのアドレスに送ろうと思ったんだろう。
そう思ったら、ちょっとだけメル友っていうのに憧れてた私は、どうしたらいいか二人の親友に相談してみる事にした。
私の名前は姫中璃琉羽(ひめなか りるは)。
現在月羽矢学園高等部二年に通う女子高生。
周りからは“おっとり天然系”とか言われてます。
そんな事ないと思うんだけどなぁ。
好きな教科は音楽。嫌いな教科は英語。
弓道部に所属していて、二人の親友とはクラスも部活も同じ。
だから、お昼休みに早速相談してみる。
「ねぇ朱夏ちゃん、智ちゃん。どう思う?」
「どうって?」
そう切り返してきたのは絹川朱夏(きぬかわ しゅか)ちゃん。思った事をズバッと言うサバサバしたお姉さんタイプ。
「私はあんまりそういうのは賛成できないな……」
少し消極的なのが南里智(みなみさと とも)ちゃん。大人しくて、何だか妹みたいなタイプ。
「そう?私は試しにやるのもアリだと思う。だって興味あるんでしょう?変な奴ならアドレス変えればいいんだし。璃琉羽次第でしょ」
「それはそうだけど……」
「もー智は心配性ね。……よし、おねーさんが責任持って相手を診断してあげようじゃないの!」
そう言った、朱夏に言われた通りに璃琉羽はメールを送る事にした。
『初めましてv(^-^)メール貰いました。琉璃と言います。蒼君はどんな感じの人なんですか?』
「これでいいの?」
「うん。ま、こんな感じでしょ。このメールでどう反応するかよね」
そう言って朱夏は意味深な笑みを見せた。
送信して暫くすると、メールが返って来た。
「しゅ、朱夏ちゃん、来ちゃった!どーしよぉ」
「ハイハイ。見せて?」
返信された本文は、次のような内容だった。
『琉璃さん?琉璃ちゃん?えっと、どっちか教えて貰えると嬉しいです(^o^)
俺は誰かに似てるって言われた事はないんで……でもあまり喋る方ではないです。ってメールならいいのかって話になりますけど(笑)
今、部活でバスケをやってます。一応レギュラーなんだ。
出来れば琉璃さんの事も教えて下さいm(_ _)m 蒼』
「へぇ、バスケ部なんだね」
「あれ、智。反対なんじゃなかったの〜?」
璃琉羽の携帯を覗き込んでいた智に、朱夏は少し意地悪そうにニヤニヤ笑いながら言う。
「朱夏の意地悪……」
すると智は、少し拗ねたようにそう言った。
「ね、ね、朱夏ちゃん。これってどうなの?OK?」
拗ねてしまった智を、「可愛い!」と抱き締めていた朱夏に早く意見を聞きたくて、璃琉羽は彼女を急かす。
「うーん。まぁ内容は丁寧だし、見栄を張ってる訳でもないみたいだし……取り敢えずはOKね」
確かに好感の持てる内容。
璃琉羽はそう思い、早速返信する事にした。
『私も蒼君と同じ高二で、弓道部に入っています。
私も誰かに似てるって言われた事はないけど、よく“天然だー”って言われちゃいます。o(>_<)o
自分ではそんな事ないと思うのに...(〃_ _)σ||
メル友は初めてなので、これから宜しくお願いしますm(_ _)m』
「送信っと……えへへっ」
こうして璃琉羽の、琉璃として蒼とのメル友のやり取りが始まった。