朱夏や智に色々とアドバイスを貰い、メールのやり取りは順調だった。
璃琉羽が思った通りいい人みたいで、年も同じだし、結構気が合う。
学校での事、家での事、お互いの趣味、etc.……気付けば、本当に些細な事までメールし合っていた。
もうお互いに知らない事は無いっていうくらいに。
知らないのは本名と……後は顔と声。
「どんな人なのかなぁ……」
文面と、その内容から、想像してみようとする。
バスケ部だから背は高いよね。
少し気さくな感じで優しくて……でもあまり喋る方ではないって言うからクールな感じかな?
優しく微笑んで話を聞いてくれる感じ。
この間のメールで兄弟みたいに育った一つ下の後輩がいるみたいだったし、面倒見がいいのかな。
あれこれと想像して。
でも。
朱夏が言っていたメル友の鉄則を思い出す。
一、自分の身元は明かさない。
一、写メ等、お互いの顔を知らせない。
一、実際に会うなんて論外。もっての外。
理由としては、相手が嘘を吐いていた時の為、用心に越した事は無いとか、顔が分かったら幻滅するかもとか、様々だった。
朱夏曰く。
「メールだけだからメル友って言うの。メールだけだから、お互い良い友達でいられるの」
だそうだ。
だけど。
璃琉羽は逢ってみたかった。
蒼が、彼がどんな人か知りたい。
どんな顔で、どんな声で、どんな表情で話をするのか。
もしかしたら、いつの間にか、メールの向こう側にいる蒼の事を、好きになっていたのかもしれない。
だから、思わず送っていた。
『今度、逢ってみませんか……?』
と。
もしかしたら、私は羨ましかったのかもしれない。
彼氏、という存在が。
それを凄く実感したのが、親友の智ちゃんに彼氏が出来た時。
弓道の大会があった時、大勢の人の前で智ちゃんに告白してきた人。
確かにあの時は、告白してきた相手を朱夏ちゃんと二人で無理矢理智ちゃんとくっ付けた、という感じだった。
でも、彼は毎日部活中の智ちゃんに逢いに来て。
最初はぎこちなかったのに、日に日に親密になっていくのが分かった。
その頃から、もし蒼君が彼氏だったら……と考えるようになっていた。
近くに居れば、傍に居れば、手を繋いで貰えるのに。
抱き締めて貰えるのに。
メールの中の蒼君が、優しかったから。
だから余計にそう思ったのかもしれない。