だが。
「!リムさんっ!」
フォリシスは慌ててリムの上に覆い被さった。
その直後、上から雪の固まりが落ちてきた。
恐らくは、木の枝に降り積もった雪が、その重みで落ちてきたのだろう。
「……平気でしたか?」
体を起こし雪を払いながら言うフォリシスに、リムは満面の笑顔を向ける。
「ええ。フォリシスさんのお蔭です」
陽の光が雪に反射して、キラキラと輝いている。
まるで雪に音が全部吸収されてしまったかのように、周りは静かだ。
そんな中で微笑むリムが、まるで別の世界の人のように見えた。
「――リムさん。貴方が好きです」
フォリシスは思わず告白してしまってから、急に我に返った。
「あ、いえ、すみません!な、何言ってるんでしょうね、僕は……今のは忘れて下さいっ……」
だがリムからは、思いも寄らない言葉が返ってきた。
「……知っています。その……あの旅の途中から、何となくそうなんじゃないかと……私も貴方といると、安心できたから……」
そうしてリムは、表情を曇らせて、でも、と続ける。
「今の私は、あの時の私とは違います。見た目も、きっと中身も……それに私は貴方よりも年上で……」
哀しげな表情を見せるリムに、フォリシスは胸が苦しくなる。
「確かに、リムさんを好きになった時、相手は子供なのに、何考えてるんだって思いました。本当のリムさんが実は僕より十近く年上だったのは軽くショック受けましたよ」
その言葉に、リムは目を伏せる。
「でも僕は、年や姿なんて関係なく、他でもない貴女自身を好きになったんです。記憶を失っていても、その人の本質は変わらないと思います。事実、
貴女の内面はそれほど変わっていませんよ?」
そうして今度は、フォリシスが表情を曇らせる。
「……僕は自分でも情けない人間だと思います。それに年下ですし……それでももし、嫌じゃなければ……僕と、付き合って頂けませんか……?」
もう後戻りは出来ない。
静かに返事を待つのみだ。
リムの口が、ゆっくりと開かれる。
「……本当に、私でいいのですか……?」
「勿論です!」
フォリシスはパッと顔を輝かせ、リムを抱き締める。
「……っあ、す、すみません突然!」
すぐに我に返って、慌てて離れるフォリシスに、リムは抱き付く。
「……嬉しいです」
「……はい」
今度こそきちんと抱き合い、二人は微笑み合った。
「……あ、忘れてた!“雪蛍の雫花”!」
思い出して花の咲いていた場所を見るが、花の姿は見つからない。
「……雪で埋まってしまいましたね」
その事にフォリシスは、力なく項垂れた。
――奮闘記はまだまだ続く――。
=Fin=