孤島から一番近い陸地は雪の大地。雪蛍を探すのに手間はいらないだろう。
だが“雪蛍の雫花”の咲く地域は限定されているので、花の蕾がある場所まで移動する事になる。
「花の蕾があるのはホノスア雪原の、主に木々の根元ですので、見つけやすいハズですよ」
ホノスア雪原は、周りを雑木林と海とに囲まれた雪原で、人が滅多に立ち入らない分、寒い場所に生息する薬草の宝庫でもある。
「……フォリシスさんは色々と物知りなのですね……」
「そうですか?」
「私は、薬草などの知識はあっても生息地までは知りません。恐らく、城仕えの魔術師達も……これでは魔法大国ラノスの名が泣きますね。
急に落ち込むリムを見て、フォリシスは慌ててフォローをする。
「そ、そんな事ないです!……無知は恥ではありません。まして、リムさんの場合、やむを得ない事情があったじゃないですか!……これから少しずつ
知っていけばいいんです。お手伝いしますから……っ!」
言葉の最後はもう、本当に真っ赤な顔でフォリシスは言う。
「……ありがとうございます。フォリシスさんは本当にお優しい方ですね」
ニッコリと微笑ったリムに、フォリシスはドキドキする。
可愛い。
少しでいいから、触れてみたい。
抱き締めたい、なんて言ったら嫌われてしまうだろうか?
フォリシスはふと、ラティスとマリノスを思い出した。
こんな時、彼らならきっと迷わずに抱き締められるんだろうなと思い、少し苦笑する。
「……私、何かおかしな事言いましたか……?」
苦笑するフォリシスを見て、勘違いしたリムがそう訊ねる。
「あ、いいえ。……少し、ラティス君とマリノス君の事を思い出しまして」
「ああ……神無さんとラティスは元気でしょうか?」
そう言ってリムは空を仰ぐ。
「ええ。きっと二人で仲良くされているかと」
フォリシスも空を見上げ、額に手を翳す。
空は青く澄み渡り、薄っすらと昼間の月が見えた。
「マリノスの前では二人の話は禁句なんですよ。名前を聞いた途端に機嫌が悪くなりますから」
「……でしょうね」
二人は暫く、旅の思い出に話を弾ませた。
ホノスア雪原に着くと、さっそく“雪蛍の雫花”を探す。
その間も、薬草に使えそうな草花を見つけると、リムに説明しながら摘み取っていく。
そうしてある木の根元で、その蕾を見つけた。
蕾は青く、今にも咲きそうな程に膨らんでいる。
フォリシスは道中で見つけた雪蛍の結晶を雪ごと入れた小瓶を取り出し、中身を、結晶が上手く蕾の上に乗るように出した。
「リムさん、見てて下さい……」
そう言ってフォリシスがそっと結晶に触れると、結晶はすぐに雫になって。
その雫が蕾に触れると、青い蕾は見る見る内に開き、満開の花が咲いた。
花は青みがかった淡い紫色で、星のような形をしていた。
「……綺麗……」
そう言って花を見つめるリムを、フォリシスは幸せな気持ちで見ていた。