「……本当、あの時は心配になって追いかけて良かったと思うよ」
「……ごめんなさい……」
 機嫌悪そうに言うラティスに、神無は思わず謝る。

「……あのね、泣いちゃった後に優しく言ってくれたでしょ?“傍にいるって約束した”って。嫌な思いさせちゃった後なのに。その時、かな……思わず告白まで しちゃうトコだった」
 そう言って照れる神無に、ラティスは思わず聞く。
「何で?何でしてくれなかったんだ、告白」
 すると神無は俯いて、弱々しく言う。
「だって、自信なかったし……もしラティスが私の事、好きじゃなかったらって思ったら、関係が壊れちゃいそうで怖くて言えなかったんだもん……」

 神無の気持ちには、ラティスも心当たりがある。
 もし自分の過去を知って、離れていったらと思うと、怖くて言えなかった。

「……でもさ、リムやフォリシスにはバレバレだったんだよな。お互い好きだって事」
 苦笑するラティスに、神無もつられて苦笑する。
「そうだね……そんなに分かり易かったかなぁ?」
「うん。少なくとも神無はバレバレ」
 頷きながら言うラティスに、神無は少し拗ねたように言う。
「……私は気付かなかった。もしかしたらって思った事もあるけど……」
 気付けなかったのは何だか悔しい。

 するとラティスはニヤリと口の端を上げて言った。
「神無はすっげー分かりやすく甘えてきたよな。俺はそれが可愛くて、思わず抱き締めたりしてたんだけど、気付かなかった?」
「なっ……私、そんなに甘えてた?」
「……」

 自覚なかったのか。

 そう思いながらラティスは微笑む。

 可愛い。
 大好きだ。
 ずっと大切にしたい。

 ラティスは席を立つと、神無のすぐ傍へと行く。
 そうして座っている神無を抱き締め、耳元で囁く。

「……愛してる」

「……ラティス……」
 ラティスは強気に微笑み、神無の唇を指で撫でると、そこにそっと口付けを落とした――。



 誰にも渡さない。
 俺だけの大切な人。
 始まり方は人それぞれ。
 それでも俺は手に入れた――。


=Fin=