「あの、最後に皆で記念撮影でもしませんか?」
 満月ちゃんの提案で、五人並んでタイマーセットで写真を撮る。
 そこに写った写真には、全員幸せそうな笑みが浮かんでいて。
 他にも何枚か、俺と琴音の二ショットとか、男三人でとか、色々撮った。


「じゃあ、写真できたら送りますね」
「ああ。楽しみにしてる」
「それじゃあ、そろそろ私達は帰るとするか。両親も祝いの席を用意しているだろうし」
 琴音がそう言うと、太陽がそれにストップをかけた。
「最後に一つだけエエですか?二人に報告があるんですわ」
「報告?」
「ほら、星。お前から言わんかい」
 自分で言い出しておいて話を星に振る太陽に、俺達は首を傾げる。
「別に報告するような事じゃ……」
 渋る星にますます首を傾げていると、満月ちゃんが傍まで来て、小さな声で言った。
「あの……ありがとうございました。私を、生徒会に誘って下さって」
 そう言ってチラッと星を見た満月ちゃんに、ピンと来る。
「え!?もしかして……」
「想いが通じたみたいだな」
「はいっ」
 それは、満月ちゃんがずっと片想いしていた星と晴れて恋人同士になれた事を意味していて。
 色々と応援してきた甲斐があったというものだ。
 それは俺よりも琴音の方が強くて。
 本当に、自分の事のように嬉しそうな笑みを浮べていた。

 最後の最後に、こんな嬉しい報告が聞けて良かった。


 三人に別れを告げ、俺と琴音は帰路に着く。
 ただ無言で。
 話したい事は色々あるハズなのに、今は何だか言葉にならない。
 そうして家が近くなってきた所で、琴音が口を開いた。
「……なぁ、弓近」
「ん……」
「良かったな、あの二人」
「そうだな」
「卒業式は別ればかりで、寂しい気もしていたが……今は幸せな気分だ」
「……俺もそう思う」
 ずっと一緒に過ごしてきた仲間と会えなくなるのは確かに寂しいけど。
 気掛かりだった満月ちゃんの事が幸せな結末になっていて、良かったと思う。
「お前の事を、皆に言えて……満月も星と想いが通じて……高校生活に悔いも心残りもない」
「そっか」
「こんな状態で新生活を始められるって、凄い事じゃないか?」
「確かに、ある意味理想的だよな」

 人って、結構過去に影響されたりするモンだからな。
 引き摺ったり、囚われたり、縛られたり。
 心機一転を図っても、容易にはできなかったりするから。
 新たなスタートを切るのに、これ程いい状態はないだろう。

「でも、そうか。新しいスタートを、今度は琴音と一緒に始められるんだな」
「幼馴染としてではなく、な」
 その言葉に、俺達は笑い合った。


 幼馴染だった頃は、どんなに近くにいても通じない想いに、切なさと苦しさをいつも感じていた。
 近くて、でも遠い存在。
 だけど想いが通じ合った今は。
 誰よりも近い存在になったから。

 ここからまた、新しく始まる。


=Fin=