「連れてきましたで〜」
「ご苦労様」
「……何すか」
……これまた無愛想な奴だな。
しかも敬語とかナシかよ。
「早速だが、生徒会メンバーになってもらいたい。現在決まっているのは、会長と副会長が私達で継続。書紀に山吹だ」
琴音が簡潔にそう言うと、浅葱は僅かに目を瞠り、山吹を見た。
「……太陽も?」
「おう、さっき引き受けたトコや」
「そう。……じゃあ会計で」
「決まりだな」
「じゃ、そういう事で」
何だかあっさり決まってしまった上に、浅葱は用が済んだとばかりにさっさと教室へ戻ってしまった。
「じゃあ、よろしゅう頼んますわ。……星、俺を置いてくなやっ」
そうして山吹も行ってしまい、俺はただ呆然としていた。
「……琴音。何なんだ、あいつら」
「ん?山吹は高等部からの外部生。両親の仕事の都合で小さい頃からあちこち引越ししてて、妙な関西弁はその影響だろうな。流石に高校は寮のあるココに入ったらしい」
成程、高校は流石に大学受験とかを視野に入れると一ヶ所に留まれた方がいいだろう。
「浅葱も高等部からの外部生だ。こいつは極端に他人との接点を持たなくて、ルームメイトの山吹とだけは親しいんだ。結構二人でつるんでるから、山吹を先に勧誘すれば、
浅葱も入ると思ってな」
……つまり、浅葱は山吹の性格に押し切られた、と。
「さて、後は若竹だな」
そうして呼び出した若竹満月は、大人しそうな性格の子だった。
「あの、私……生徒会とかそういうのはちょっと……」
人前に出るタイプではないのだろう。琴音の勧誘に、すぐに断ってきたのだが。
「他のメンバーを言ってなかったな。会長と副会長は継続。書紀に二年の山吹太陽、会計は同じく二年の……」
琴音はもったいぶるように一旦そこで言葉を止め、ニヤリと笑って言った。
「浅葱星だ」
すると若竹は、それまでの申し訳なさそうな態度とは打って変わって、半ば興奮するように聞いてきた。
「浅葱って、あの浅葱君ですかっ!?や、やります!私、生徒会入ります!書紀やらせて下さいっ!」
必死になってそう言う若竹に、琴音が「そう言うと思った」と小さく呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
……もしかして、確信犯か?
「じゃあよろしく頼む」
「はいっ!ありがとうございました!」
そう言って頭をキチンと下げて、若竹は教室に戻って行った。
「さて、これで全員決まったな。後は先生に報告して……」
「ちょっと待て。聞きたい事がある」
「ん?若竹がいきなりやるって言い出した事についてか」
「や、それは聞かなくても分かるから。どうせ浅葱の事が好きだとかそういうんだろ?」
そんな事、あの反応を見れば誰だって分かる。
「俺が聞きたいのはそういう事じゃなくてだな。あいつらが使える奴らなのかって事だ!」
「ああ、それなら心配いらない。三人とも学年で上位の成績だ」
「……成績だけじゃダメだろ」
「まぁな。……山吹は企画発案・実行に長けていて、浅葱は暗算検定の段位持ち。若竹は企画書作成が得意だ」
「……どこでそんな情報……って聞くだけ野暮か……」
ちなみに琴音の言う企画というのは、文化祭とかクラス内行事とか、そういう物の事を指している。
「面白そうだろう?」
「……そうだな」
六月に就任し、一ヶ月の引継ぎ業務を経て、七月から本格的に活動する生徒会新メンバー。
どうなる事やら……。