「そこのお二人。ちょっとよろしいですか?」
 デート中に突然、占い師と思われる人物に声を掛けられ、二人は足を止める。
 その人物が言うには。
「お二人は別れた方が、お互いの為になると出ていますよ」
 との事だった。


≪占い≫


【咲&直樹の場合】


「……全く、何が“別れた方が、お互いの為になる”だ。馬鹿馬鹿しい」
 占い師の言葉に全く耳を傾けないままその場を後にした直樹は、不機嫌そうにそう言った。

 不機嫌な理由は、占い師に言われた言葉だけではなく。
 内容を気にしているような咲の態度に対してもだった。

「で、でも、ちゃんと話を聞いた方が良かったんじゃないですか?」
「あんなの、最後までまともに話を聞いたら、それを理由に占い料金をせびられるに決まってる」
「あ……成程。でも……」
 それでもまだ気にしている咲に、直樹はハッキリ言う。
「俺とお前の立場を知ったら、誰だってお互いの為に別れた方がいいって言うに決まってるだろ。咲はそれで俺と別れるのに納得できるのか?」
「そんな……そんなの、無理です」
「だろ?なのに占いで出てるから、って言われただけで、じゃあ別れましょうっておかしくないか?」
「……おかしいです」
「ならもう気にするな。というか、たかが占いごときで別れてたまるか」
 直樹のその発言に、咲は少しだけ笑う。
「大抵の女の子は、占いを結構信じてるんですよ?」
「だからどうした。あんなのどうせ、俺と咲の見た目で判断しただけだろ。年が離れてる方が苦労が多いだろうって」
「苦労って?」
 首を傾げる咲に、直樹は面倒臭そうに言う。
「年が離れてるだけで、両親から反対される場合が多いって事だ」

 咲と直樹の年の差は10才。
 確かにそれだけ離れていれば、大抵の親はまず反対するだろう。

「だからまぁ、一般論を指摘されたぐらいに思っとけ」
「はい」

 そうして二人の会話は、別の話題に移った。