「そこのお二人。ちょっとよろしいですか?」
 デート中に突然、占い師と思われる人物に声を掛けられ、二人は足を止める。
 その人物が言うには。
「お二人は別れた方が、お互いの為になると出ていますよ」
 との事だった。


≪占い≫


【琴音&弓近の場合】


「面白い事を言うな。そうは思わないか?弓近」
 愉快そうにそう言う琴音に、弓近は多少呆れつつも言う。
「俺はあんまり関わりたくないがな」
「そうか?それにしても……余程目がいいのだな」
「?どういう意味だ?」
「西洋占星術や四柱推命は生年月日が必要不可欠。姓名判断は名の通り氏名が必須。易占いやタロットでは占うのに時間が掛かる」
「……そうか、人相学」

 人の人相で占う人相学なら、顔を見れば結果は一目瞭然だ。
 だが、自分達はお互いに相手の顔を見て話しながら歩いていた。
 だから、占い師のすぐ傍を通る時には、占い師側を歩いている人物の顔は死角になって見えないはずで。
 顔が判別できる角度――つまり余程前から見ていたのだろう。
 琴音はそれを指して“目がいい”と言ったのだ。

「そうだ。でなければ呼び止めて占いの結果を言う、なんてできないだろう。まぁ……中には霊感占いとか特殊なのもあるみたいだが」
 そう言って琴音は肩を竦めてみせる。
「しかし、ようやくお互いの気持ちが通じて付き合うようになった矢先にコレとはな」
「それは俺がまだ条件を全部クリアしてないから、そういう結果になっただけだろ」
「一理あるな。なら、この占いの結果を覆してみろ。……信じてるからな」
「勿論」
 そう言ってお互いに不敵な笑みを浮かべると、占い師に向けて言う。
「取り敢えず、指摘には礼を言っておきます」
「但し、明確な意図をどこかに表示する事を勧めますよ。占い師なら占いの料金表示を。もし見習いなら、その旨を」
「そうでない場合――勧誘や何かの販売目的なら、それはそれで目的を事前に明かしておかないと、詐欺と間違われかねませんから」

 そうして若干引き攣った笑みを浮かべる占い師に対し、二人でニッコリと笑顔を浮かべ、その場を後にした。