後日談side:NAOKI
本当に今年の三者面談は、精神的に疲れた……つっても、大変だったのは咲と向井の二人だけだが。
まず、咲の面談に、あろう事かお袋が代わりに来ると言い出した時には、マジで焦った。
まぁそれはまだいい。何とか対策は立てれたし。
……龍矢には後で色々言われたが。
次回からはちゃんと親を呼ぶという事を咲に約束させたし。
それはそれで緊張はするが……。
だがしかし。
問題は向井の方だった。
代役に立てた龍矢の都合と、向井の保護者の都合が上手く噛み合わなかったらどうしようかと本気で心配した。
なのに。
保護者で現れたのは、あの龍矢本人だぞ!?
あの野郎……こうなる事が分かってて、ワザと黙っていやがった。
きっと陰でほくそ笑んでいたに違いない。
しかもだ。向井はあの向日コーポレーションの元社長令嬢で。
龍矢がその従兄で後見人だと!?
全くもって信じられん。
どーせアイツの事だから、向井のヤツに色々聞いたり、逆に吹き込んだりしてるんだろうな……。
特に俺の大学時代の素行とか……?
流石にそれはヤバイ。特に彼女は咲の親友。もし咲にまでその話が伝わったりしたら……!
……いや、流石に龍矢も言わない、よな?
まぁ、話してたとしても、向井はそういう噂話的なモノはしそうにない。
何と言っても元社長令嬢。彼女自身か、もしくはその周囲の人間がそういうモノに対して、かなり痛い目を見てそうだし。
何にせよ、これからかなり面倒臭い事になる気がするのは、俺の気のせいか……?
数学教官室で、直樹がそんな風に思いながら溜息を吐いていると、龍矢に声を掛けられた。
「……そういえばお前、あの生田って生徒と付き合ってるだろ」
その言葉は妙に確信を持った言い方で。
「勘弁してくれ……」
直樹は、気のせいなんかじゃなかった、と脱力した。
=Fin=