最終日side:SATIKA
龍矢さんの都合で、私の面談は最終日の時間外――といっても、最終予定時間のすぐ後だったりするんだけど。
でも、予定の時間を過ぎても、龍矢さんが現れる気配は一向にない。
「向井。一度連絡取ってみたらどうだ?」
時間になったら先に教室内で待っているように言われてたんだけどな……。
その時だった。
「悪い、幸花!遅れた!」
そう言いながら勢いよく戸を開けて、龍矢が姿を現した。
「龍矢さん!」
ちゃんと来てくれた事が嬉しくて、幸花は傍に駆け寄る。
「ゴメンな?最後の最後に、少し話が長引いた」
そうして頭を撫でられ、龍矢に促されて席に着く。
と、直樹が何だか物凄く引き攣った顔で、ワナワナと震えていた。
「どうかしましたか?早坂セーンセ」
心底楽しそうに龍矢がそう言うと、直樹は突然立ち上がり。
「龍矢ぁ!何でテメェがココに来るんだーーーっ!?」
と、ビシッと指を龍矢に突き付けて怒鳴った。
「何でって……保護者だから?」
龍矢は意地悪くニヤッとした笑みを浮かべる。
龍矢さんって、こんな表情もするんだぁ……。
イヤ、そうじゃなくて。
からかって楽しんでる。
早坂先生に内緒にしとけって、つまりこれが目的だったんだ……。
とにかく、このままだと直樹が今にも龍矢に殴りかかりそうだと思った幸花は、止めに入る。
「あの!内緒にしててすみませんでした!でも、これにはワケがあるんです……っ!」
幸花がそう言うと、二人が同時に彼女を見る。
龍矢は心配そうな表情で。
直樹は訝しげな表情で。
幸花は龍矢に、大丈夫、という笑みを向けると、今までの事をかいつまんで話した。
向日の事、従兄妹という事、後見人の事など、最低限必要な事を。
「……マジか……龍矢が向日の関係者……」
……驚くのはそこなんですか、先生。
「俺は最初から向日とは関係ねーよ。母親が縁切られてんだから」
「……まぁいい。面談やるぞ、面談!」
そう言って直樹はすぐに気持ちを切り替える。
まぁ先生らしいといえばらしいと思うけれど。
こうして何とか私の三者面談は終わった。