夏休みや冬休み等の長期の休みは、学生にとっては嬉しい限り。
だけどそうとも言っていられなくて……。
【時音の場合】
「何で私がアンタに合わせなくちゃいけないのよー……」
まだ休みは始まったばかりだというのに、時音は道行に言われて宿題を片付けていた。
「ほら、文句言わない。俺はもう宿題終わってるんだから」
「は!?だってまだ夏休み始まったばかりでしょ?何でもう終わってるの!?」
「宿題って各教科ごとに学期最後の授業の時に出されるだろ。休み前にはもう終わらせたけど?」
「……」
時音は、道行の言葉に唖然とする。
宿題を休み前に終わらせるなんて、どういう考え方してるのよ!
休み中にコツコツやるのが宿題ってモンじゃないの!?
そうは思ったが、きっと道行には何を言っても無駄だろう。
およそいつ勉強しているか分からないのに、いつも学年トップの座を全教科満点でキープしている彼にとっては、宿題なんて些細な問題なのだろう。
「……で、何で私まで今、宿題を終わらせなくちゃいけないのよ」
「その方が休み中、何も気にせずに過ごせるだろ?」
「……」
どこまでも自分本位な道行の意見に、時音は反抗する気すら起きない。
……というか、これ以上反抗したら後でどうなるか分からない。
「……分かったわよ。終わらせればいいんでしょ」
こうして時音にしては珍しく、かなり早く宿題を終わらせたのだが。
休み明けの実力テスト。
「……赤点ギリギリ……」
「何だ時音。もう少しマシな点数取れよ」
そう言う道行はいつも通り満点で。
「……すっごい納得いかない……」
時音は、次からはやっぱり自分のペースで宿題を片付けよう、と思った。