夏休みや冬休み等の長期の休みは、学生にとっては嬉しい限り。
だけどそうとも言っていられなくて……。
【遊菜の場合】
「先輩。どうしよう」
「何が?」
「宿題が終わりません」
貴寿がバイトに行くと、先にシフトで入っていた遊菜がそう言ってきた。
「……取り敢えず、バイトをやってる場合じゃないね」
「ハイ……」
遊菜は休みの間、結構バイトをやっていて。
その合間に貴寿とも結構逢っていて。
宿題は一応進めていたが、新学期が近付くにつれ、どう考えても今のペースじゃ終わらないと判断して貴寿に泣き付いたのだ。
「本当にどうしよう〜っ……」
泣きそうな顔の遊菜に、貴寿は一応昨年はどうだったのか聞いてみる。
「だって、去年はまだバイトしてなかったし。誰とも付き合ってなかったから……」
「……遊菜。両立って言葉、知ってる?」
どうも遊菜は。
昨年と同じペースで宿題を片付けていったらしく。
だが、宿題の量は昨年より増えてるという事と、バイトの時間と貴寿との時間分、ペースを速めなくてはいけないという事に気付いていなかったらしく。
それで休みが終わり間近になってから、こうして慌てる羽目になったらしい。
「まぁ、遊菜らしいっていえば、らしいかもしれないけど……」
付き合い始めて分かったのだが、遊菜は時々抜けてる事があって。
そこがまた可愛いと思うのだが、今回はそうも言ってられない。
そう思って貴寿は、遊菜の宿題を見てやる事にした。
「取り敢えず、どれ位残ってる?」
「これだけです……」
遊菜が差し出した分を見て、貴寿は言うほど大した事はないなと思う。
「大丈夫。これぐらいなら、一日あれば終わるよ」
「……それは嫌味ですか……」
それもその筈、高校在学中、常に成績は上位クラスだった貴寿に対し、遊菜はいつも赤点スレスレの成績。
貴寿には一日で終わる量でも、遊菜にとっては大変な量なのだ。
「まぁでも、死ぬ気でやれば、休み中には終わるよ」
「……ハイ」
そうして貴寿の手伝いの元、遊菜は何とか休み中に宿題を終わらせた。