≪トリプルデート≫
それは、二学期に入ったあるお昼休みの事だった。
「ねぇ、今度の休み、トリプルデートしてみない?」
「「え?」」
突然朱夏がそう言い出し、智も璃琉羽も一瞬何を言われたか分からなかった。
「で、でも!礼君は白山君や宗方君とは面識無いんだよ?」
いち早くそう反論したのは智だ。
「別にいいんじゃない?というより、会わせといた方が安心すると思うし」
「「安心?」」
不思議そうに聞く二人に、朱夏は頷いて難しい顔をする。
「何かさぁ……愁と宗方が、弓道部に顔を出す他校生、ってのを気にしてるみたいなのよね……」
「緋久君が?」
自分の彼氏の名前が出て、璃琉羽は驚く。
「……そんな素振りないけどなぁ?」
「何かねー、その他校生は私達の誰かを落とす為に、日々通いつめてるって噂が流れてるみたい」
「……礼君は私と付き合ってるのに……」
と、智は噂の内容に少なからず落ち込んだ。
「で、やる?トリプルデート」
話題を最初に戻して、朱夏は意気揚々と聞く。
「でも……OKするかどうか……」
「うん……それに、白山君が一番反対するんじゃ……」
「う゛……」
どうやら朱夏はそこまで考えていなかったらしい。
そうして一瞬の逡巡の後、再び提案する。
「じゃあさ、同じ時間に同じ場所で待ち合わせて、その時に言うとか。もしダメなら、そのままそれぞれデートに行けばいいし」
その提案に智と璃琉羽は、お互い困ったように顔を見合わせる。
「……分かった。でも、ダメだったとしても文句言っちゃダメだよ?」
「うんうん。その後が気まずくなるのも嫌でしょ?」
二人が折れてそう言うと、朱夏はニッコリと笑った。
「それでいいわ。よし、それじゃあ、いつにする?」
そうして朱夏は、至極楽しそうに計画を練り始めた。