モール内のパスタのお店で昼食にし、次のお店へと足を向ける。
 だが怜人は店の前で立ち止まった。
「あー、取り敢えずこれ持って一人で買ってこい」
 そう言って音々子が渡されたのは、見た事のない黒い色のカード。
「……え、コレってもしかしてゴールドの上?戦車も買えるってヤツ!?」
「モチ。だから遠慮せず使って良し」
 一通りそのカードを眺めて、音々子は溜息を吐く。

 怜人ってマジで金持ちなんだな……。

「あれ?でも何で一人で?」
「いーから行ってこい」
 そう言った怜人の顔は心なしか赤い。
「俺は他のトコ見てるから。買い物済んで、まだ俺が戻らなかったら店の前で待ってろ。いいな?」
 そう言い残して怜人は行ってしまい、音々子は不思議に思って、先程はよく見ていなかったお店の方に目を向け、そこでようやく理由が分かった。
「あ」
 そのお店とは。
「……成程。確かに堂々とは入り難いだろうなぁ……」
 苦笑しながら音々子が入っていったのは、ランジェリーショップ。


「……でもなぁ……」
 音々子は思わず自分の体型を見て溜息を吐く。
 施設でロクに食べさせて貰えなくて、ガリガリに痩せて貧相な体。成長期にきちんと栄養が取れていないもんだから、発育は悪い。
 小柄で、子供みたいな体つき。
 今日、背の高い怜人と隣を歩いてて、まるで大人と子供だと思った。
「私が150くらいで、怜人は180くらいあるかな……」

 ……って、身長は関係なくて。

「わざわざこんなトコで買うなんて、勿体ない気がする……」
 だが怜人の性格からして、何も買わないというのは許されないだろう。

 仕方なく何点か選んで店を出ると、怜人はもう店のすぐ傍で待っていた。
「意外に時間掛かったな」
「だって……サイズが……」
「は?何だって?」
 口篭る音々子に、怜人は怪訝そうに聞く。
「……怜人のえっち。どんなの買ったか見たいの?」
 話を逸らす為に冗談半分にそう言うと、意外な事に怜人が慌てた。
「み、見ねーよ!ほら、もう行くぞ」

 あ、怜人が照れてる。かーわいいー。

 そんな事を思って、音々子は何となく嬉しい気分になる。
「……何だよ」
「別にー?」


 そうしてモール内の他の店も少し覗いて。
 怜人が「別に行きたい店がある」と言ったので、車で移動する事になった。