≪side:NENEKO≫


 怜人の後姿を見ながら、音々子はその背中に向かって小さく呟く。
「ごめん、怜人……好きになって、ごめん……」

 本当は、分かっている。
 この想いは実らない。
 怜人にとって、自分のこの想いはただの重荷にしかならないから。
 いっその事、ここから出て行けば楽なのかもしれない。

 でも、そんなのあまりにも自分勝手だ。
 元々、ペットになると言い出したのは自分だし、世話になるだけなっておいて、お金もかなり使わせてしまったのに、出て行くなんて虫が良すぎる。

 ……見ていられるだけで幸せ、なんて言えたらどんなにいいか。
 一度溢れ出した想いはもう、どうする事もできなくて。
 押さえ付けるのは苦しいけれど。
 それでも。
 本当は、何よりも怜人の傍にいたいから。
 苦しくても、辛くても。私はここにいる事を選ぶ。