朱夏が真剣に考えていると智と璃琉羽は何やらコソコソと話し始めた。
「……何話してるの?」
「え?いや、そのね?何で白山君は朱夏に意地悪をするのかな、と」
「私が背、高いのが気に喰わないんじゃない?」

 白山の背は朱夏より2〜3p高いだけで、クラスの男子の中では低い方だ。

「自分が背、低いから」

 それで八つ当たりされるなんて、いい迷惑だ。
 好きで背が高い訳じゃないんだから。

 だが、智と璃琉羽は顔を見合わせてまた何やらコソコソと話し出した。
「ねぇ、さっきから何なの?」
 目の前でコソコソと話をされると、気になるし、あまりいい気分はしない。
 すると璃琉羽と智は、何か使命感を持ったような顔で頷き合った。
「朱夏ちゃん」
「な、何?」
「どうして白山君は朱夏を気にすると思う?」
「そんなの、女の私に負けたくないからじゃ、ないの……?」
 二人の気迫に押されて朱夏は気圧される。
「でも、朱夏ちゃん以外の背の高い子が牛乳飲んでても、何も言わないよ?」
「……え?」

 気付かなかった。
 そういえば、いつも私だけにちょっかいを掛けてくる。
 これって。
 もしかして。

「……個人的に何か恨まれてる……?」
 朱夏が至極真面目にそう言うと、智と璃琉羽が脱力した。
「ちっがーう!もう朱夏ってば何でそっちにいくかなぁ」
「もっとよく考えた方がいいよ?」
「?」

 よく考える?
 何を?

「どういう意味?」
 全く分からなくて聞いたのに、二人に溜息を吐かれてしまう。
「だからー」
「何で朱夏ちゃんだけかって事」
「……だから……恨まれて……」
「「違う」」
 二人にそうハモられて朱夏はたじろいだ。

 な、何か二人共、心なしか少しイライラしてる?
 いつもは本当に女の子らしくて、可愛くて、ほんわりとした雰囲気なのに。
 だからこそ今の二人には逆らえない何かを感じるんですけど?

「わ、分かった。ちゃんと考える。だから少し時間を頂戴。ね?」
「……うん、分かった」
「でも、ちゃんと考えてあげなきゃダメだよ?」
 そうしてその場は何とか収まり、朱夏は内心ホッとした。