それから結局丸一日考えて。
 何も思い浮かばなかったし、二人にあそこまで言われると気にもなって。
 気になった事はそのままにしておけない性質の朱夏は、直接本人に理由を聞く事にした。

「白山。アンタさ、何でいつも私の牛乳取るの?私の事嫌いなら嫌いでいいからもうほっといてよ」
「朱夏ちゃん!」
「どーして本人に聞きに行っちゃうかなぁもう!」

 後ろで璃琉羽と智が慌てているが、知ったこっちゃない。
 それよりも今は、コイツの行動を問い質して止めさせる方が先。

「で、どうなの」
「べっ……別に、嫌いな訳じゃ……」
 口をモゴモゴと動かして、何だかハッキリとしない白山に、朱夏は人差し指をビシッと突き付けて追求する。
「ちょっと!男ならハッキリしなさいよ!」

 さぁ白山。アンタはどんな答えを返す?

「う……うるせぇよ!このデカ女!」
「な……っ!」

 何よ逆切れ!?つくづくムカつく!
 てかやっぱり恨みって事でいいんじゃないの?

 すると不意に、じっと眼を見据えられた。
「な、何よ」
 突然の事に朱夏は少し慌てる。
 と、一瞬だけ白山は眉を寄せて、辛そうな表情をした。
「別に」
 次の瞬間にはもう、それだけを言って立ち上がって。
「……はっ!逃げられた……っ!」
 朱夏が気付いた時には教室を出て行った後だった。
 悔しそうにしている朱夏に、智と璃琉羽が声を掛ける。
「今のは朱夏が悪いんだよ?」
「そうそう。こんなクラス皆のいる前じゃ、白山君、可哀相だよ」
 その言葉に周りを見ると、確かにクラス中が注目していた。

 ……確かに可哀相だったかな。
 ま、でも悪いのアイツだし。
 そんな事を思って、この時の朱夏は深くは考えなかった。