そうして放課後、時音に最大のピンチが訪れた。
「貴女が上条時音さん?ちょっと来てもらえるかしら?」
「……えっと」

 さしずめ“三年生の先輩方御一行様、ご案内〜”といった所だろうか?
 絶対ファンクラブの人達だ。
 校舎裏に呼び出されて別れろとか言われるんだーっ!
 付き合ってるつもりないのに。
 ってか呼び出されてのこのこ付いて行く時音さんじゃないわよ。
 痛い目なんて遭いたくないし。

 そう心の中で思って、出来るだけ媚びるように笑顔で言う。
「何の御用でしょうか?お話、ここじゃダメですか……?」

 触らぬ神に祟りなし。
 こういう場合、逆らうような態度はNGだ。
 だが。

「大事な話なんだからダメに決まってるでしょ?いいから来なさいよ」

 ……うぅ、通じないか。
 どうしよう。
 十中八九、別れろって話なんだろうケド。
 最初から付き合ってません、なんて言っても納得しないだろうし、まず信じない。
 だから相手に合わせて“分かりました、別れます”なんて言っても、アイツの方から近付いてくるんじゃ意味がない。
 久我に話した所で、アイツも絶対納得しないだろうし。

 いっその事、奴の本性をバラそうか?
 いや、信じないだろうし、余計にこじれる。

 だからってこのまま付いて行くのもなぁ……。
 最低限、叩かれるくらいはありそうだし。
 でも行かないと嫌がらせさせられそう。
 そういう類は軽いモノから重いモノまで色々あるけど。
 ……実行するかな、重いヤツ。

「……」

 実行しそうだ、この人達なら。
 自殺モンの体験はしたくないなぁ。

「ちょっと!聞いてるの!?」
 ヒステリックなその叫びに、時音は我に返る。

 あ。しまった、考え込んでた。

「いいから来なさいよ!」
 痺れを切らしたのか、先輩達は時音の腕を乱暴に掴む。
「っ!」

 ヤバイ。
 校舎裏コースだ。

 だが、腕を振り解こうにも、数人に両腕をがっちりと固められて引っ張られている為、どうにもならない。