そうして数日が経ったある日。
「本日は後期の委員決めをしたいと思います」
HRの時に、後期の委員選出があった。
クラス委員長は立候補・推薦、でなければ各自で投票だ。
これは当然、前期に続いて久我に決まった。
そうして副委員長は委員長の指名制。
もし誰も指名しなければ、委員長の時と同様、立候補・推薦で決まる。
「じゃあ今回も指名させてもらいます。……上条さん、お願いしますね」
その言葉に、一瞬誰もが固まった。
「……はぁ!?」
一番最初に我に返ったのは、ある意味久我の言動に慣れつつある時音本人だ。
「何で!?」
「何でも」
有無を言わせない口調。
そうでなくとも、この“ご指名”はある意味絶対なのに。
しかも。
この“ご指名”でのカップル成立率はかなり高いらしい。
「私じゃなくても、前回と同じ人指名すれば!」
ちなみに前期の副委員長は宗方緋久だった。
「彼はバスケ部でレギュラーだからね」
バスケ部は全部活中、一番ハードだとされている。
「私だって部活やってる」
「お遊び美術部ね」
そう言われて、時音は一瞬言葉に詰まる。
確かに美術部は馴れ合いが多くて、真面目に絵を描いている人は少ないが。
「……私はちゃんと描いてるもん……」
すると久我は、それはもう極上の笑みを浮かべるようにニッコリと微笑んで。
「上条さんには、公私共に僕を支えるパートナーになって欲しいんだ」
この言葉に、クラス中から野次が飛んだ。
その内容は冷やかしから悲鳴に近いものまであって。
そりゃそうだ。あんな歯の浮くようなセリフ。
高校生の言う言葉じゃない。
プロポーズしてるんじゃないんだからさ……。
時音には、それがどうしても嫌がらせにしか聞こえなかった。
「上条さん、決定事項という事でいいですね?では今後の進行を手伝って下さい。板書の方、お願いしますね」
拒否権はナシですか。
うぅ……奴と一緒の時間がますます増えるーっ。
こうして時音は名実共に、公私問わず、久我道行のパートナーという位置についてしまった。
副委員長としての仕事は、思った程大変ではなかった。
何故なら久我がそつなくパパッとこなしてしまうから。
むしろ自分は足手纏い。パートナーには程遠い。
……って何落ち込んでるのよ私!
むしろココは喜ぶべき所じゃない!
それでも。
時音は、相手が誰であろうと、やっぱり足手纏いは嫌だった。
それに何故か久我は何も言ってこなかった。
嫌味の一つでも言いそうなものなのに、自分の分を終わらせると、「全く時音はしょうがないなぁ」と、どこか楽しそうに時音の分もやる。
これは何かの前触れ?
もしかして、罠?
……何の?
久我の態度を見ていると申し訳なくなるし、優しくされると調子が狂う。
ねぇ、久我。
アンタ何考えてんの?
一緒にいる時間は長いから、聞くチャンスなんていくらでもある。
なのに。
聞きたいのに、聞けない。