人相の悪い男達が、か弱い女性を取り囲んでいる。
「い…嫌ぁ!誰か助けて……!」
「いい加減諦めて俺達と来いよっ」
男達の内の一人が女性の腕を掴む。
「待て!」
そう言ったのはクロスだ。遅れてロッドも男達に言う。
「アンタ等、恥ずかしいとは思わない訳?女性はもっと優しく、丁寧にエスコートすべきでしょーが。まして、嫌がる女性を無理矢理なんて論外!男の風上にも置けやしない」
それを聞いたクロスはボソッと呟く。
「女たらし」
「フェミニストと言って欲しいね」
だがその言葉には何も言わず、クロスは腰に差した剣の柄に手を掛ける。
「その女性を離せ!」
「俺は無視かよ……」
そうぼやきながら、ロッドも背中の大剣に手を掛けた。
「チッ。おい、ずらかるぞ」
男達は舌打ちをすると、以外にあっさりと引いていった。
「大丈夫か?」
二人は女性に近付く。
「あの、有難うございました」
「なぁ、さっきの奴等何者?ヤケにあっさり引いたな」
ロッドは男達の去った方を見ながら言う。先には森が広がっていた。
「……リグナムと言う男の、手下達です」
その名前に、ロッドは一瞬鋭い眼をする。
「その話、詳しく聞かせてくれないか?」
クロス達は助けた女性に案内され、村の村長から話を聞く。
それによると、リグナムは手下数名を引き連れ、数日前から森に住み着いたらしい。
「リグナムっと……あった“懸賞金三十万ガルド”…C級か。大した奴じゃなさそうだけど」
ロッドは懐から手配書の束を取り出して言った。
「おぉ、あんた達賞金稼ぎか!ならば奴等を捕えてくれんか?」
「もちろん!ちなみに奴等、何か要求してきたりしてません?」
不敵な笑みを浮かべてロッドはそう言った。
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
そう言ったロッドに、村人達は不安を隠せなかった。何故なら、ロッドの今している格好がバレバレの女装だからだ。
膝下までの動き易いフレアのロングスカートに、上着と頭巾。頭巾はフードタイプで顔が隠せる物だ。
クロスは元々女性だからいい。髪も何とか隠せた。
だが。
「……ロッド。流石にそれは無理があるだろう……」
「えー?何で、カワイーじゃん俺」
言いながらその場でロッドがクルリと一回転すると、スカートの裾がフワッと舞い上がる。村の男達はそれを見て、内心吐きたくなる。
「バレても平気だって。向こうも戦意喪失するだろうし」
というより、バレない方がおかしい。
「……私の戦意と集中力が削がれるのだが」
そもそも、二人の格好には訳がある。リグナム達は、村の食料を奪い、今度は村の娘達を要求していると言うのだ。
そこで村娘に変装して近付く、というのがこの作戦。
しかしクロスは作戦も何もあったもんじゃないと思う。
「……油断させるのが目的だろう。やはり無理が……」
「いーから出発!」
クロスは溜息を吐いた。