第七章〜昔馴染〜



 クロスとロッドが賞金首を探して街を転々としていたある日。
 ピュノスという街で、一人の男が声を掛けて来た。
「おぉい!……お前ロッドだろ?久しぶりじゃん!」
「ゼノス!?久しぶりだなぁ。元気か?」
 ロッドの知り合いらしいその男は、何だか人懐っこそうな印象で。
 二人はそのまま立ち話を始めてしまった。
 仕方なくクロスは暫く二人のやり取りを見ている事にする。

 今迄クロスはロッドの容姿を特に気に留めた事はなかった。
 だが改めて見ると、髪と眼は濃い蜂蜜みたいな色で、今は陽の光を受けてキラキラ輝いている。

 まるで、太陽みたいだ。

 自分はそれに気付く余裕が出て来たのだろうか?
 ボンヤリとそんな事を思っていたが、話は一向に終わらない。

「……ロッド」
 クロスはロッドの服の端を掴んで引っ張る。
 完全に除け者にされているみたいで何か嫌だった。
 そんなクロスの仕草を可愛いとか内心思いながら、ロッドは二人にそれぞれを紹介する。
「クロス。……紹介するよ。こいつはゼノスっていう俺達と同じ賞金稼ぎ。……で、ゼノス。俺の相棒のクロスだ」
「ヨロシク〜」
「……ああ」
 何だか軽い奴だと、クロスは思う。
「あれ?でもお前相棒は要らないって前にリリーに言ってたじゃん」
「えーだってあれは……」
 ロッドがそう言った時だった。
「ロッド♪」
 見知らぬ女の子がロッドに抱き付いた。
「ゲッ……リリーアンヌ!?」
「はい♪」
 顔を引きつらせるロッドに、満面の笑みを浮かべ抱き付いている少女。
 それを見てクロスは一瞬、胸の奥がチリッとした。
 あれ……何だろう今の。
 そう思ったがよく分からない。前にもあったような気はするが。
 取り敢えずそれは置いといて、クロスはロッドに質問する。
「ロッド、その子は?」
「……こいつはリリーアンヌ。ゼノスの従妹で……お、怒ってたりする?」
 恐る恐るそう聞くロッドだったが、クロスにはアッサリと別に、の一言で片付けられてしまう。
 その様子を見てゼノスは言う。
「リリー。ロッドが困ってるだろ。離れてやれ」
「でもゼノス。折角ロッドに会えたのに」
「いいから」
 強く言われてリリーアンヌは渋々離れた。
「ゼノス、助かった」
「いいって。ところで……」
 ゼノスはロッドに耳打ちをする。
「クロスって女?」
「……分かる?」
「まぁそりゃ顔見えなくてもお前の態度見てればね〜。……リリーには内緒の方がいいよな」
「……そうしてくれ」
 そう言ってロッドは溜息を吐いた。