次の日、早速リリーアンヌに押し切られ、四人はピュノスの街のギルドへ向かう事になった。


 ギルドというのは、主にはブラックリストハンター達の情報収集の場だ。手配書なんかはここで手に入れる。
 そこには同業者が大勢集い、賞金首の情報交換等もされている。
 そして、許可証〈ライセンス〉の発行もギルドが統括している。
 発行には簡単な査定と手続きだけ。その先は自分次第だ。


 ともあれロッドは困っていた。

 クロスが査定を受けるのは非常にマズイ。
 まず第一に異形がバレる。これはクロスにとって大問題だ。
 次に女だとバレる。これはリリーアンヌにバレると色んな意味で大問題だ。
 それにクロスなら簡単に査定をパスするだろう。
 ライセンスを取ったら、クロスが自分から離れていってしまう気がする。
 リリーに付き纏われるとか以前に、クロスが離れていくのは嫌だ。
 こんなの絶対ダメだ。

 意を決してロッドは行動に出る。
「クロス!」
 ロッドはクロスの腕を掴んで歩き始める。
「お、おいどうしたんだロッド、引っ張るな、離せ!」
「クロスはライセンス取らなくていい」
「ロッド何を……」
 ロッドがようやく立ち止まったのは、町外れの人気の無い所まで来てからだった。そうしてクロスに向き直る。
「クロスはずっと俺といればいい。だから必要ない」
 必死な顔で言われてクロスは気付く。
「……別にライセンスを取ったからといって、別々に仕事をしなければならないという事ではないだろう」
 呆れ顔だが、その表情は優しい。
「クロス……」
 だが二人の間にリリーアンヌが割って入る。
「ちょっと待ってよ!男同士で気持ち悪い。ロッドには私がいるのよ!?私の方が絶対ロッドの役に立つわ。……ロッドの前から消えなさいよ!」
 そう言ってリリーアンヌはクロスを突き飛ばした。
「……っ」
 突然の事でクロスはよろめくが、何とか倒れずに踏み止どまる。
 しかしフードは外れ、素顔が露になった。
「……っ!化物……!」
 リリーアンヌはよろけてロッドにぶつかり、そのまま彼の服を掴んで言う。
「ねぇ、何で?どうしてこんな化物と一緒にいるのよ。殺されちゃうよ?」
 その表情は困惑していて。
 今度はクロスを激しく睨み付ける。
「……アンタがロッドに何か術でも掛けて誘惑してるんでしょう!?でなきゃアンタみたいな女の……異形の化物の傍にいるハズないじゃない!」
 次の瞬間。パンッと乾いた音が辺りに響く。
「!?」
 ロッドがリリーアンヌの頬を平手で叩いたのだ。
「クロスを悪く言わないでくれる?ハッキリ言って迷惑だ。誰を傍に置くか、誰の傍にいるか、俺は自分で決める」
 ロッドの表情は普段からは想像もつかない程冷酷で。
 静かな怒りが感じ取れた。
「行こう、クロス」
「だが……」
 しかしロッドはそのまま歩いて行ってしまう。
 クロスが仕方なく付いて行くと、後ろから泣き声が聞こえてきた。
「どうして!?どうして私じゃダメなのよロッドぉ!」
 そっと振り返ると、ゼノスは泣きじゃくる従妹を優しく抱き締めていた。