ところでロッドは、困った事が一つある。
 それは勿論クロスの事。
 情報収集の為、話す相手によっては、まぁ、その、思わず……ねぇ?
 一応俺も男だし?ついデレっとしてしまう事もある訳で。
 勿論クロス一筋だけど。
 そんな時、クロスの性格的には、耳でも引っ張って。
「何鼻の下伸ばしてるんだ」
 とか言いそうなものなのに。
 実際には、今にも泣き出しそうに、両の瞳に涙を浮かべて。
「……やっぱり、普通の女の子の方がいいよな……」
 とか言うんだから。
 ……反則だって。
「俺はクロスが一番大切なの。他はどーでもいい。……何度も言わすな」
「ロッド……」
 その時のクロスの笑顔ときたら。
 いや、マジ可愛いって。
 ……本当ヤバイってくらい。
 別にクロスは計算している訳でも、まして意識なんてしていない。
 ただ本当に、無意識下の素直な言動。
 異形という、自分の存在自体に負い目があって。
 俺が信用出来ない訳ではないが、やはり時々、本当は異形の自分の事が、嫌なんじゃないか、とか思って。
 でも、その度に俺がその事を否定するから。
 それが物凄く嬉しいだけなのだ。
 もう二度と、この幸せを失いたくなくて。
 手放したくなくて。
 不安で。
 必死なだけなのだ。
 ……それは分かっているんだが。
 頼むから街中ではやめてくれ。
 キス出来ねーじゃねーかっ!
 なんて言ったら、きっと怒るから言えないのだが。