そうして、今迄の出現場所から推測して、先回りをする事にした。
「多分、この街に現れると思うから、二、三日様子を見よう」
早速宿を取って、だが意外に早くビラストは現れた。
しかも最悪な事に、アントスが街に出ている時に。
「だーもー!何処行った!?あんのバカ王子!」
取り敢えず街の人を非難させつつ、ビラストを広い場所に誘導する。
もし万が一アントスの身に危険が及ぶような事があれば、フィンネル国を敵に回すも同じ事。
早々にビラストを捕らえる必要があった。
「被害が出る前に捕らえればいい話だ。アントスに限らず、街の人の為にも」
「……そうだな。よし、クロスは右。スフォードは左から回り込んで挟み撃ちに。取り囲むぞ!」
「わかった」
「承知」
そうして三方向からビラストを取り囲む。
「観念しろ、ビラスト!」
ビラストは筋肉質の大男で、クロスの二倍ぐらいの体格だった。
手には鎖の付いた棒を持っており、鎖の先には棘付きの巨大な鉄球がぶら下がっている。
「ブラックリストハンターだな?お前等も今迄の奴等同様、この鉄球でぺしゃんこにしてやるぜ!」
ビラストは片方の手で鎖部分を掴むと、その場で鉄球を振り回し始めた。
「おらぁ!」
「!」
鉄球がロッド目掛けて振り下ろされる。
ロッドは難なく躱すが、代わりに石畳の地面が粉々に砕けた。
「マジかよ……っ!あんなの喰らったらシャレになんねーぞ……クロス!スフォード!」
ロッドの呼び掛けに二人は頷く。
「そんなのちっとも当たらねーぜ。今迄弱い奴しか相手してないだろ?」
「テメェ……!」
わざと挑発するようにロッドが言うと、案の定ビラストは逆上して、ロッドに襲い掛かった。
再び鉄球がロッド目掛けて振り下ろされる。
「今だ!」
鉄球が石畳を砕いた直後。
クロスとスフォードは同じ動作でビラストの隙を突き、その懐に入り込む。
そのまま二人同時に切り上げ、ビラストは膝をついた。
「ぐ……ぁ……!?」
「さっすが師弟。息ピッタリじゃん」
「当然だ」
ロッドとスフォードが、互いに声を掛け合う。
その一瞬の隙を、ビラストは見逃さなかった。
逃げ出すように、あらぬ方向へ走り出す。
その先。
見覚えのあるグレー、灰色掛かった黒髪。
「……っアントス!?」
人質にでもするつもりなのだろう。ビラストなら、アントスの首を片手でへし折る事も可能だ。
しかしそれよりも早く、アントスとビラストの間にクロスが割って入った。
「させるか!」
「邪魔だぁ!」
だが、無理に割って入った為体勢を整えられなかったのか、ビラストが払った腕に簡単に吹き飛ばされてしまった。
「きゃ……っ!」
「クロスッ!」
それを見て、ロッドとスフォードは頭にカッと血がのぼる。
「貴様ッ!」
スフォードがビラストの足に剣を突き立てる。
「がっ……!」
「許さねぇ!」
そうしてロッドは剣の腹で、ビラストの頭に渾身の一撃を叩き込んだ。