「クロス、大丈夫か!?」
 ロッドはすぐさまクロスに駆け寄り、抱き起こす。
 するとクロスは、すぐに目を開けた。
「う……ロッド……?」
「どこか、痛い所は?」
「ん……少しぶつけた程度かな。咄嗟に剣で庇ったし」
 クロスの言葉にロッドはホッとした表情になり、強く彼女を抱き締める。
「……良かった、無事で……」
 その声は心なしか涙声で、体の方も少し震えていた。
「ロッド……平気だよ?それより……」
 クロスはビラストの方を見る。
「あぁ。頭に一発ガツンとお見舞いしといたから伸びてる。アントスの方にはスフォードが行ってる」
 クロスは軽く息を吐いて俯く。
「そっか……ごめん。心配掛けて……」
「いや、一瞬でも隙を作った俺達が悪いんだ。ごめん」
 その時、アントスがクロスに抱き付いた。
「母様!」
 いや、抱き付くと言うよりはしがみ付く感じだ。
「母様、死なないで……僕を独りにしないで……!」
 その言葉に、クロスもロッドも困惑する。
「どうやら、先程の事と母親が亡くなった時の事が、ダブって見えたのでしょう。姫を亡き母と混同しているようです」
 スフォードの説明に、二人は顔を見合わせる。
 泣きじゃくるアントスは、酷く幼く見えた。
 クロスはアントスに向き合い、その背中を撫でてやりながら優しく言う。
「大丈夫。私はちゃんとここに居るから。もう平気ですよ、アントス……」
「母……様……」
 その言葉にアントスは安心したのか、そのまま眠ってしまった。


 ビラストを役人に引き渡し、賞金の半分を街の補修や避難の際の怪我人の治療の為に寄付をする。
「……S級捕らえたのって初めて。スゲー大金」
 半分を寄付してもまだいつもより残るお金に、ロッドは少々困惑気味だ。
 しかし、今は眠っているアントスの方が気になる。
「アントスは?」
 今クロス達がいるのは宿の一室だ。
「ぐっすり眠ってる」
「よっぽど母親の死を引きずってるんだな……」
 あの取り乱しようは尋常じゃなかった。

 だがそれは、ロッド自身にも身に覚えのある事だ。