それからというもの、ロッドのアントスに対する接し方が少し変わった。
今迄はただ、クロスに近付くお邪魔虫、という感じの扱いだったのだが。
しいて言えば、そう。
悪友みたいな感じ。
「ほら、アントス。これ食ってみろよ」
「……だってこれ、今そこの茂みから」
「いいから、いいから。クロスも大好きな木の実なんだけどなー」
「……クロスも?」
肩を抱き、コソコソと内緒話のように話して。
「……何をしている、ロッド」
それに気付いたスフォードが、アントスの手にある物に気付く。
「貴様、アントス様に何を食べさせようと」
だが、スフォードが木の実を取り上げる前に、アントスはそれを口に含む。
「アントス様!?」
「……少し酸っぱいけど……甘いな。もっとないのか?」
するとロッドは、勝ち誇ったような笑みをスフォードに向ける。
「アントスもこう言ってる事だし?クロスもコレ好きだもんなー?ってワケで……アンタも食べてみたら?」
「……いらん」
「じゃあ三人で食べようぜ。はい、クロス。今度からは堂々と食べられるな」
木の実を渡しながら言われた言葉に、クロスは満面の笑みで、嬉しそうに返事をする。
「……うんっ!」
ロッドは、自分でも食べながらスフォードに聞く。
「なー、スフォード。マジでいらねーの?」
「……大概しつこいな、貴様も」
「味見くらいしとけばー?」
こういう時のロッドは、ニヤニヤと物凄く意地の悪い顔をしている。
「貴様……っ!」
スフォードが剣の柄に手を掛けるよりも早く、ロッドは木の実を放った。
「アンタの分。食うか捨てるかは自分で判断すればいい」
そうしてクロスとアントスに向き直る。
「……」
陰で、スフォードが木の実を口に含んだというのは、言うまでもない。
アントス自身、今の状況によって段々変わっていった。
旅の初めの頃は、色々と不満や我侭を言っていたのが、最近では凄く楽しそうにしている。
「……旅もいいもんだろ?」
「ああ、凄く楽しい。色んな事を知って、色んな物を見て……珍品なんかよりずっといい。クロスがいて、ロッドがいて、スフォードがいる。今、皆に囲まれているこの時を、何より大切にしたいと思える」
穏やかな雰囲気。
旅の初めには無かった気がする。
「今のこの時が、ずっと続くといいな……」
アントスは、見上げた空に広がる青空に向かって呟いた。
だが、どんな物事にも、終わりは必ずやって来る。