「よく……ご自分で決断なされました」
スフォードは、本当は分かっていた。
アントスがクロスを探しに行くと言い出したのは、クロスの中に亡き母の面影を見たから。
アントスの母親は、異形でこそ無いものの、雪の様に白い髪だったらしい。
異形の、クロスの銀の髪に、よく似た。
そうして、それは決して、恋愛感情には発展しないのだという事を。
でもそれは、本人が気付いて決断する事だったから。
アントスは、暫くして戻って来た二人に国に戻る事を告げる。
「……それでいいのか?お前」
突然の事に、ロッドは険しい顔をする。
「ああ。もう決めた」
だが、アントスの意志は揺るがなかった。
「少し、寂しくなりますね」
「……でも、決めたから」
そうして最後という事で、夜は特別に騒いだ。
翌朝。
「本当に今迄ありがとう。楽しかった」
「何だよ、他人行儀だな。俺達ダチじゃねーか」
別れの時になってしんみりするアントスに、ロッドは明るく言う。
「ダチ……?初めてだ、そんな風に言われたの。凄く嬉しい!」
「ダチってのはな、離れてても繋がってるもんなんだぜ?」
「ああ!離れてても、僕達はずっとダチだ!」
そうして今度はクロスに向かって言う。
「クロスとは恋人になれなかったけど……母様に似た感じだった」
どうやらアントスは、最後まで恋人の意味を何か勘違いしているらしい。
「そうですか?」
事情を知らないクロスは、少しだけ微妙な表情だ。
「じゃあスフォードは?」
「むぅ……何だろうな?ダチとは違う気がするし……物知りだから……」
「んじゃあ頼れる兄貴辺りにしとけ」
ロッドの提案に、アントスは名案だというように目を輝かせる。
「兄様か!僕、兄様って欲しかったんだ。よし、スフォード。国に戻っても僕の傍に居てくれ」
「……我が主である、リアス国王のお許しが出れば」
困ったような顔でスフォードは言うが、多分アントスの希望は叶うだろう。
名残惜しくはあったが、別れの時間が来た。
「手紙書くから。元気でな!」
「絶対だぞ!?いつか、国にも寄ってくれ!」
そうして、国に帰る為にアントスとスフォードが乗った馬車が見えなくなるまで、クロスとロッドは見送った。