きっぱりとクロスの口から出た言葉。
その事にロッドは嬉しくなって、思わず抱き締める。
「クロス〜〜っ!」
だがその直後、目の前に横から剣を突き付けられた。
「取り敢えず、離れてもらおうか?」
目だけで視線を向けると、やはりスフォードで。
クロスも恥ずかしいのか、俯いたまま少しだけ弱々と抵抗していたので、離す事にした。
表情は分からないが、きっと真っ赤なのだろうと思って。
すると突然横から伸びてきた手が、ロッドの目の前でクロスを抱き締めた。
「ロッドばかりずるいぞ。僕もクロスに触りたい」
「王子!?」
「アントス様!?」
一瞬放心状態に陥ったロッドだったが、クロスとスフォード、二人の慌てる声に我に返る。
「てめ……!クロスから離れろーッ!」
ロッドはアントスをクロスから引き離し、彼女を隠すように抱き締める。
「クロスに気安く触るんじゃねぇ!」
だがアントスはそれが腑に落ちないのか、ムッとした表情で言う。
「どうしてロッドはよくて僕はダメなんだ!?」
「そんなの俺達が恋人同士だからに決まってるだろ」
フンッと鼻を鳴らして得意気なロッドに、アントスは益々ムッとする。
「スフォード!」
「はっ!」
呼ばれたスフォードはすぐに臨戦態勢に入る。
だが。
「恋人同士って何だ」
「……はい?」
その場に一瞬、沈黙が流れた。
一般常識に疎い、というのは何処の王族でも一緒らしい。
それともある意味特殊な環境で育ったのが要因なのだろうか?
「……互いに相手を想い合っている者同士、とでも言いましょうか」
スフォードの説明に暫く考えてから、アントスが再び口を開く。
「では、クロスが僕の事を想うようになれば、僕とも恋人同士になるから触ってもいいんだよな?」
「は……」
はぁ!?
何かを激しく勘違いしているアントスに、全員言葉を失う。
だが、更にアントスのとんでもない発言が続く。
「よし。ではクロスが僕とも恋人同士になるまで、僕も旅に同行するぞ!」
「……はぁーっ!?」
だから“僕とも”って何だ、“とも”って!
色々と突っ込んで勘違いを直したいのも山々だったが、突然の同行宣言に三人はそれぞれ頭を抱えた。
こうして、クロス、ロッド、スフォード、アントスの四人による、奇妙な旅が始まった。