そうして今度はクロスが聞く。
「王子は今迄どうされていたのですか?」
「アントスでいいよ。……今迄はその街を治める貴族等の屋敷で、だな」
 アントスはおもむろに懐から何かを取り出す。
「これを見せたら、皆、快く泊めてくれた」
 それは、手の平大の銀の台に、細かいレリーフが彫ってある物だった。
「……フィンネル王室の徽章……」
 身分隠してないじゃん。というのは口には出さないでおく。
 クロスと共に徽章を見ていたロッドは、唐突にある事に思い至る。
「そういえばお前等、何で俺達の居場所が分かったんだ?移動は馬車とか馬とか使ったにせよ、足取りなんてそうそう……」
「ブラックリストハンター、ロッド=ベルゼーム」
「!」
「有名らしいな」

 足取りなんて、そうそう分かるもんじゃないと思ったのに。

「さすがギルド、といった所か。情報はすぐ手に入った」
「……まいったな」


 この業界では、大物を捕らえる程知名度は上がる。
 ましてロッドの蜂蜜色の髪と柄の赤い大剣は目立つ方だ。
 特に、異形の悪魔の伝承故か、赤い色は何かと敬遠されがち。
 アントスが珍しいと言った通り、柄の赤い剣は他に見ない。
 まぁ大剣というだけで目立つが。
 それに、以前と違って今はクロスもいる。
 大方、フードを被って正体の分からない相棒を連れている、ぐらいの情報はあるだろう。


「目撃情報や換金情報を元に馬車で先回りをした。ただ、峠のど真ん中に馬車を停めておくと邪魔だし、警戒される恐れもあったので先に帰したが」
 それでこの街までは歩きだったのか。
 アントスが道中、疲れたの何だのうるさかったなぁ……。
 そう思ってロッドは溜息を吐く。
「ロッドって有名だったんだ……」
 そう呟いたのはクロスだ。
「一応その道じゃあね。たまに俺の事知ってる悪党いるし」
「そうなんだぁ」
 感心したように言うクロスに、ロッドは悪い気はしなかった。

 そうして話はそれきりにし、四人は休む事にした。