待ち合わせの場所を決める時になって、蒼がかなり近くに住んでいる事が分かった。
 電車で数駅しか離れていない場所。
 だから、その中間の駅で待ち合わせる事にした。
 顔は逢うまでお楽しみと、お互い当日に着る服を写メで教え合って。
「へぇ〜。カジュアルだけど少し落ち着いた感じ。服の好み、前にメールで教えて貰ったのと同じ感じだ」

 ちなみに璃琉羽は朱夏と智に、逢う事を内緒にしていた。
 逢った後に報告して二人を驚かせる為。
「蒼君……どんな人なのかなぁ」
 そうして、約束の日を凄く楽しみにしていた。


 この時の璃琉羽は、後でまさかあんな事になるなんて知らずに。


 待ち合わせ当日。
 駅に着いた璃琉羽は、早速目的の服を着た人を探す。

 どんな人だろう。
 カッコいい人だといいな。

 そうして遠くに見つけた目印の服装。
「ど、どんな人かなぁ……」
 期待を込めて、視線を顔へと移す。
「え……?」
 その瞬間、璃琉羽は頭が真っ白になった。
「……何、で……宗方君が……?」

 宗方緋久(むなかた あけひさ)。
 確か、隣のクラスの男子で、高等部から月羽矢に通う璃琉羽とは違い、彼は内部生だ。
 だけど、あんまりいい噂は聞かなくて。
 中でも中等部の頃に一年後輩の木暮凍護(こぐれ とうご)という人物と一緒に、他校生を喧嘩で全員病院送りにした、という噂は有名だ。
 実際にその現場を見た訳でも、まして話なんてした事もないからよく知らないが、璃琉羽の苦手なタイプ。
 何故なら、璃琉羽は喧嘩とかの暴力沙汰は大嫌いで、そういうのは不良のする事だと思っているからだ。

 勿論、蒼とはまるきり正反対。
 なのに彼は蒼の服装で待ち合わせ場所に立っている。

 信じられなかった。
 だけど、確かめずにはいられなくて。
 蒼にメールを送る。

『蒼君、もう待ってたりする?』

 すると、程なくして宗方は携帯を取り出して何かを操作すると、辺りを見回し、また何か操作する。
 そうして彼が携帯をしまうと、丁度璃琉羽の携帯がメールの着信を告げる。

 相手は、勿論――蒼。

『うん。もしかして場所判り辛い?』

 携帯の画面から顔を上げて見てみると、誰かを探しているような宗方の姿が目に入った。
 やっぱり。

 蒼君=宗方君なんだ――。