駅に戻ると、宗方は朝と同じ場所に立っていた。
「……」
「姫中……来て、くれないかと思った」
「何で……?どうして私を知ってるの?最初から琉璃が誰か、知ってたの?」
璃琉羽が問い詰めると、宗方は僅かに表情を暗くした。
「……知ってた」
何となく、予想は付いていた。
朱夏の電話口でのあの口振りと、ここに来た時の宗方の様子で。
「俺、姫中の事がずっと好きだった。でも、嫌われているのも知ってたんだ。だから……どうしたら俺の嫌なイメージを払拭出来るか考えて」
「それで……メル友?」
宗方は無言で頷く。
「相手の顔が分からない分、先入観無く付き合えると思ったから」
「でも、アドレスは……!?」
そう。アドレスを知らなければ、この計画は上手くいかない。
「……絹川に、聞いた」
「朱夏ちゃん、に……」
璃琉羽は愕然とする。
やっぱり。
知ってた。
朱夏ちゃん酷いよ。
全部知ってて、それなのに『メル友やってみれば』なんて言ったの?
「……楽しかった……?」
「え……?」
「人騙して楽しかった!?酷いよ、朱夏ちゃんも宗方君も!何にも知らずに、何にも気付かずにいる私を見て、陰で笑ってたんでしょ!?」
「ちょ、待てよ!少なくとも、絹川は関係無い」
「嘘!全部知ってて、なのにメル友の誘いに乗るように仕向けたんだよ!?」
私が彼を、宗方君を嫌いだと知っていた筈なのに。
「それでもアイツはお前の友達だろ?」
「――っ!」
友達。
友達だから。
親友だと思っていたからこそ――。
「……いよ……」
「え?」
「アンタも朱夏ちゃんも、大っ嫌いよ!」
そう叫んで、璃琉羽はその場を駆け出した。
家に帰った璃琉羽は、思い切り泣いた。
帰ってくる途中、蒼=宗方から何通もメールが来ていたが、どうしても見る気にはなれなかった。
その内に朱夏から電話が掛かってきて。
璃琉羽は思わず携帯の電源を切った。