翌日、学校に行くのは気が重かった。
 学校に行けば、嫌が応にも二人に会ってしまう。
 特に朱夏は同じクラス。確実に顔を合わせる事になる。
「休んじゃおっかなぁ……」
 そう思ったが、もし休んだりしたら、それこそ二人に笑い者にされる気がして嫌だった。
 だから、重たい体を引きずるようにして、璃琉羽は学校へと向かった。


 教室に入るとまだ朱夏の姿は無く、少し安心した。
「おはよー璃琉羽っ」
 そう声を掛けてきたのは智だ。

 そういえば今回の事、智ちゃんは関わってるのかな――。

「どうしたの、璃琉羽!眼、少し腫れてるよ!?」
 璃琉羽の異変に気付いた智は、心配そうな表情で彼女の顔を覗き込んだ。
「あの…ね。蒼君に、逢ったんだ……」
「え!?ど、どうだったの?やっぱり、カッコいい人?」
 興味津々、といった感じの智に、彼女は何も知らないのだと確信する。
「蒼君、ね……隣のクラスの、宗方君だった……」
 それを聞いた智の顔色がサッと変わる。
「大丈夫!?もしかして、何かされたの!?」
 当然智も宗方の噂は知っているし、璃琉羽が彼を苦手にしている、というよりむしろ内心怖がっている事を知っている。
「璃琉羽?」
「……ううん、何もされてない。ただ、ね……これって、朱夏ちゃんが仕組んだ事だったの」
「どういう意味……?だって朱夏、一言もそんな……」
「だって私のアドレス、朱夏ちゃんから聞いたって……」
「……私、朱夏に聞いてみる!」
 璃琉羽は、ここで初めて朱夏が教室内にいる事に気が付いた。
「智ちゃん、いいよ」
「でも、朱夏にだって何か考えがあるのかも」
「……朱夏ちゃんの味方するの?」
 だが、智は首を横に振った。
「違うよ。ほら、私が礼君に告白された時、二人は断ろうとした私に『付き合ってみれば?』って言ったでしょ?あの時と今回って一緒なんじゃないかな」
「……一緒?」
「よく考えて、璃琉羽。朱夏は璃琉羽が嫌がる事、何の考えも無しに、まして意地悪なんかですると思う?」
 智のその問いに、璃琉羽は首を横に振る。
「ね?……今すぐ、とは言わないけど、落ち着いたらちゃんと朱夏に本心を聞いて、仲直りしよ?」
「……うん」

 だが今の璃琉羽には、到底そんな日が来るとは思えなかった。