だが。
「え……何で……?」
メールはアドレス不明で返ってきてしまった。
前のアドレスも、新しく変えたというアドレスも。
「どうして……?何で肝心な時に届かないの……!」
どうしてもっと早く気が付かなかったんだろう?
もっと早くに気付いていたなら、もっと違う結果が待っていたのだろうか?
もう、手遅れなのだろうか?
「宗方…君……」
絶望感が、胸に広がる。
「……ううん。もう逢えない訳じゃない。まだ、諦めるには早すぎる……」
そう。まだ連絡手段が途絶えただけ。
学校に行けば、いくらでも会う事は出来る。
璃琉羽は不安に押し潰されそうな気持ちを何とか振り払い、沈んだ心を奮い立たせた。
次の日、学校に行くと朱夏が遠慮がちに声を掛けてきた。
「璃琉羽……オハヨ」
昨日電話で話したとはいえ、やはり直接話すのは戸惑う。
「朱夏ちゃん……うん、おはよ」
だからなるべく笑顔で返したつもりだが、上手く出来たかわからない。
「朱夏、璃琉羽!仲直りしたの!?」
突然そう声を掛けてきたのは智だ。
驚いていたが、その顔はとても嬉しそうで。
それを見たら、何だかギクシャクしているのが馬鹿みたいに思えてきた。
「……うんっ!昨日電話で仲直りしたの。ね、朱夏ちゃん」
「……そうね。ちょっとすれ違っちゃってたけど」
少しだけ苦笑して、朱夏は言う。
「ま、何にせよ……心配掛けてごめんね?」
「智ちゃんごめん!」
璃琉羽と朱夏は智に心配を掛けてしまった事を謝る。
「ううん、いいの。……でも良かった。これでまた三人一緒だね」
「うんっ」
「本当に」
そう言いあって三人は笑う。
「そうそう。部活の皆にも謝らなくちゃダメだよ?ここ数日二人がピリピリしてるから、皆怖がってたんだから。礼君も心配してたし」
礼君、というのは智の彼氏だ。
本当に周りの人皆に迷惑を掛けていたらしい。
それにすら気が付かなかったなんて……いかに自分本位だったかが分かる。
「……で、璃琉羽。宗方とは、どうなったの?」
ずっと気にしていたのだろう。朱夏が聞きにくそうに口を開いた。
「朱夏ちゃん。その事で、お願いがあるの」
そう言った璃琉羽の真剣な顔に、朱夏も神妙な面持ちになる。
「アドレスが、変えられてて……メールが届かないの……」
言ってて璃琉羽は思わず泣きそうになる。
「アイツを、呼び出せばいいのね?」
璃琉羽の言わんとしている事が分かったのか、朱夏が先にそう言う。
「うん。お願い、できる……?」
「当たり前よ、任せておいて。というか、これくらいしか出来ないけど、ね」
そうして璃琉羽の名は伏せて、宗方を人気の無い屋上に呼び出す事にした。