最初の出会いはセリークルの街外れ。
子供が魔物に襲われそうになっていて。
自分がが助けに出る前に現れたのが、神無だった。
「……ま、いっか。あんなザコ一匹ぐらい」
だが神無は少し苦戦していて。
戦闘は初心者なのだとすぐに気付いた。
だから少し気になったんだ。
そうしてすぐに声を掛けて。
話をしてみて、気の強い子だと思った。
長く、綺麗な黒髪と、意志の強そうな漆黒の眼が印象的で。
その時、丁度気ままな旅の同伴者を探していた俺は、神無となら旅をしてみたいと思ったんだ。
だが次の日、宿から出てきた彼女は男連れで。
正直ショックだった。
だからフォリシスが彼氏じゃないって分かって、少し嬉しかった。
どうせ目的のない旅をしていたのだし、気が合わなければすぐに別れればいいだけの事。
そう思ってその旅に同行する事にした。
まさかその旅が、あそこまで大変なものになるとは思いもしなかったけど。
ラティスが旅の中でハッキリと神無を異性として意識し出したのは、ヒューレ山脈を越えている時だ。
木々が生い茂る山道を歩いていると、突然神無が叫び声を上げて、ラティスに抱き付いたのだ。
「きゃああっ!」
「え、何!?ど、どうした神無!」
「け、毛虫っ!取ってぇ〜!」
見ると、今にも泣き出しそうに怯える神無の肩の辺りには、小さな毛虫が乗っていた。
一体何がそんなに怖いんだか。
魔物相手には怯まないのに。
そんな事を思いながら、ラティスは毛虫を摘んで茂みに放ってやった。
「……取ったぞ」
「……ほ、本当に……?」
「――っ!」
泣きそうな顔で、少し震えながら見上げてきた神無が、何だか物凄く可愛く見えて。
ラティスはドキドキしながら視線を逸らした。
「……毛虫くらい、いつでも取ってやるよ」
「うん……ありがとう」
そうして向けられた笑顔に、ラティスは思わず神無を抱き締めたくなった。
それからというもの、ラティスは神無を目で追うようになっていった。
だけど、どう接していいか分からなくて。
照れ隠しもあってラティスは、その後暫く神無を避けるような態度を取ってしまっていた。
そうしてそれと同時期に、神無は戦いの集中力をなくしていった――。
「ラティス?考え込んでどうかした?」
神無にそう声を掛けられて、ラティスは急に現実に引き戻される。
「神無……いや、ちょっとね。ヒューレ山脈を越えてた時の事を思い出して」
「また懐かしいモノを思い出して……そういえば、ラティスに一度怒鳴られた事もあったっけ」
そうして、神無も遠い目をして思い出す。
懐かしい旅の思い出を――。