翌日からは雪との戦いだった。
防寒具を着て旅を続けるものの、孤島を目指して北上するにつれ、気温は下がり、時折吹雪にもなる。
雪も深くなり、今では膝下まで埋まっていた。
「……っわぁ!」
「大丈夫か?」
「……っ大丈夫……!」
雪に足を取られて何度も前のめりに倒れそうになる神無を支えるのはラティスだ。
清涼の里では雪なんか滅多に降る事はなかったし、ここまで積もる事は絶対にない。
フォリシスは清涼の里に来る時にもここを通っているし、ラティスもそれなりには慣れている様子だ。
リムも体が憶えているのか、しっかりとした足取りで。
つまり、雪に慣れていないのは神無のみという事になる。
流石にリムは先に進むにつれ、背が低いせいで埋まって歩けなくなり、今は先頭を歩くフォリシスにおんぶされている状態だが。
その二人から大分遅れて、雪に慣れていないせいで歩くペースが遅い神無と、それに合わせるようにラティスが付き添って歩いている。
悪戦苦闘して歩く神無を、ラティスは心配するように声を掛ける。
「あんま無理すんな。慣れてないんだろ?」
「うん……ごめん」
迷惑を掛けている事に申し訳なくなって、神無は謝る。
「バーカ、お前のせいじゃないだろ?」
笑いながらそう言われて、神無は何だか気持ちが少し軽くなった。
「ラティス……うぉわぁあ!」
そうしてまたすぐにバランスを崩して、ラティスを巻き込むように、彼の上に倒れ込んだ。その事に神無は自分が情けなくなる。
「ごめぇん……」
「……平気だ。それにしても……まさか押し倒されるとはなぁ」
ニヤニヤとした顔でそう言われて、神無は一気に顔を真っ赤にさせる。
「なっ……!?バッ……そっ……!」
慌てて何か言おうとするが、うまく言葉が出てこず、何だか悔しくなる。
その時だった。
「二人共、危ない!」
その声に反応して見ると、魔物が襲い掛かってきていた。
そうして神無の背中に向けて、魔物の鋭い爪が振り下ろされる。
「っ!く……っそ!」
しかし振り下ろし切る直前、爪はラティスの鞭によって弾かれた。
そこにフォリシスとリムの魔法が炸裂する。
「
「
魔法は見事魔物に命中し、そのまま倒す事が出来た。
「神無、平気か!?」
ホッとした所でラティスがそう心配してくる。
「うん、平気。ありがと」
そう言うと突然ラティスに抱き締められた。
「ラ、ラティス……!?」
驚いて困惑する神無をよそに、ラティスはホッと息を吐く。
「よかった、間に合って……お前に何かあったら、どうしようかと……」
「え……?」
その言葉に一瞬ドキッとしてラティスを見ると、彼の顔は真っ赤で。
「……行くぞっ」
ラティスはすぐにそっぽを向いて立ち上がる。
「……うん」
どうしよう、嬉しい。
何故そう思うのか分からなかったが、神無は自分の頬が自然と赤くなるのだけは感じた。
「二人共……っ大丈夫でしたか……?」
少しして、かなり離れた所から引き返してきたフォリシス達が合流した。
「うん、大丈夫。……っていうか、フォリシスの方こそ大丈夫……?」
考えてみれば、ずっとリムを背負って移動しているのだ。
しかも一度通ったかなりの距離を急いで引き返してきて。
「……平気……っです……」
息切れして、かなり疲れているのが目に見えて分かる。
「……少し休憩しよっか」
どう考えても平気じゃないフォリシスを見て、反対する者はいなかった。