暫しの間、周囲に沈黙が流れる。
「……一旦外に出ましょうか」
そうフォリシスが言って、全員外へと歩き出した。
だが、ラティスだけはその場に立ち尽くしていた。
それに気付いた神無が声を掛ける。
「ラティス……?」
「あ……?あぁ……悪い……」
その顔は青ざめ、辛そうだった。
実際、ラティスは相当嫌な汗を掻いていた。
神無はそんなラティスを見ている事しか出来なくて。
何と声を掛ければいいのか分からない自分が凄くもどかしくて、堪らなく嫌だった。
その時だった。
「!?」
洞窟が急に揺れ、パラパラと小さい粒が落ちてくる。
「いけない、崩れる!皆、早く外へ!」
全員急いで外に出る。と、先程の揺れが地震のせいではない事が分かった。
「何だ貴様等は……」
外には、魔人がいた。
大賢者の所に現れた魔人と似ていたが、別の奴だ。
「まぁいい……死ね」
冷酷にそう言うと、魔人はエネルギーの塊のようなモノを放ってきた。
「皆、散って!」
バラバラに散ってその攻撃を躱すと、今までいた場所が吹き飛んだ。
「さっきの揺れは、やっぱコイツみたいね」
そう言いながら神無は、宙に浮く敵にどう攻撃するかを考える。
「先程みたいなのをまともに喰らったら、ひとたまりもありませんからね……
フォリシスは相手の場に超重力を発生させる魔法を唱える。
「同感です。……
続けてリムが雷を伴った嵐を発生させる。
しかし。
「この程度か……」
魔人には傷一つ見当たらなかった。
「効いていない……!?」
フォリシスとリムは愕然とし、驚きを隠せない。
そんな二人に見向きもせず、魔人がラティスに近付いた。
「さぁ……貴様の持っているそれを寄越せ……」
魔人の狙いは、どうやら水の珠のようだった。
ラティスは鞭を取るが、まだ先程の動揺を引きずっているように見えた。
「ラティス、下がってて!」
神無は剣を構えてラティスと魔人の間に割って入る。
「神無!お前こそ下がってろ」
「だって!今のラティス、何か変だよ?ここは私に任せて」
しかし、その会話の隙を突いて、魔人は神無の首を片手で締め上げた。
「……っく……!?」
神無の体は宙に浮き上がる。
魔人の手首を掴み、足をバタつかせ、必死にもがくが逃れられない。
「神無!」
「「神無さんっ!」」
魔法では神無まで巻き込む恐れがある為、フォリシスとリムには見ている事しか出来ない。
そうして、ラティスが鞭を強く握った時だった。
「うっ!?な、何だコレは、目が、目がーーっ!」
何かが魔人の目に当たり、魔人は神無を離して苦しがった。
「うっ……ゲホッゴホッ……っな、何……?」
神無は咳き込み、状況把握に辺りを見回す。
すると、マリノスが手に何か持っているのが分かった。
「超激辛スパイシー弾だ。効くだろう?」
「クソ……ッ!人間風情が……覚えておれ!」
そう言い捨てて、魔人はその場から姿を消した。