そうして皆がマリノスの元に集まる。

「今のは何ですか?何かが飛んだように見えましたが……」
「……それが武器か……?」
 流石のラティスも、驚きを隠せない。
「どうだ凄いだろう。神無も見たかい?」
 マリノスは、得意そうに武器を見せる。
「え?あ、うん、まぁ……ありがとう、助かったわ」

 本当は見てる余裕なんてなかったケド。

 すると、マリノスの武器をじっと見ていたフォリシスが口を開く。
「これ……マニュファダスの物ですね?」
「あぁ。“銃”っていう、いわば飛び道具だな。弾を込めて発射する代物さ」

 マニュファダスといえば、主に鉱業で発展している街だ。

「昔はそこに住んでいてね。色々あって今はこっちにいるけれど。材料さえあれば、弾はこっちでも作れるしね」
 するとリムは納得したように言う。
「だから魔物を恐れなかったのですね」
「まぁね。気を悪くしたかい?」
「いえ。ただ、それなら戦闘に加わって頂きたいと思いまして」

 確かに、無力を装って楽していた事になる。
 守りながらの戦い、というのは、実際かなりキツイものがある。

「……生憎と手持ちが少なくてね。出来るだけギリギリまで使いたくなかったんだ。悪かったね」
 それが本当なら、仕方のない事だ。
 でなければ、神無はあのまま魔人に絞め殺されていたかもしれない。
「まぁまぁ。一度街に戻ろうよ。こんなトコで話しててもしょうがないし。但し!マリノス。自分の身は自分で守る事。いい?」
 神無に笑顔で言われ、仕方ないと言わんばかりにマリノスは肩を竦めた。


 帰り道は楽だった。
 何故なら、マリノスを守りながら戦う、という事がなくなったからだ。
 それに、ラティスとマリノスが一度もいがみ合わなかった。
 正確に言えば、ラティスがずっと一人で思い詰めた顔をしているのだが。

 そうして街まで戻った神無達は、再びマリノスの家に泊めて貰い、部屋で次の行き先を模索する。
「エバーラッサから出ている船は二通りあります。セリークル行きと、反対方面のキャデスレット行き」
 エバーラッサから東に航路を取るのがセリークル、西に航路を取るのがキャデスレット行きだ。
 どちらから行っても、大陸続きになっている為、問題はない。
「じゃあキャデスレットから行く?船はこっちに行く方が早いし、どの道大陸横断して全部回るんだもん」
 ニ〜三日の違いでも、長く船に乗っているのは多分退屈になる。
 それに距離が短いという事は、船賃も多少は安く済むだろう。
「そう……ですね。では、キャデスレットという事で」

 砂漠のオアシス、キャデスレット。一体どんな所だろう。
 神無はワクワクした。