一人になった神無は、ベッドに横たわったまま、腕を顔の前でクロスさせる。
「あーあ……もーダメだなぁ、私……皆に迷惑掛けて……最低……」

 そう自己嫌悪していると、コンコンとドアがノックされた。
「はい」
「……」
 入ってきたのはラティスだった。
 まだ怒っているらしく、少し荒々しく椅子に腰掛けると、ムスッとした表情で神無を見る。
「……俺はまだ怒ってるからな。何も言わなかった事」
 その様子に、神無は苦笑しながら言う。
「……うん、見れば分かる……それより、ありがとね」
「何が」
「ここまで運んで、ずっと付き添ってくれてたんでしょ?」
 神無がそう言うと、ラティスは目を瞠って視線を逸らす。
「聞いたのか……まぁ、その、仲間だし……大事にしたいし……っ俺はもう行くからな!」
 言葉の途中で口篭ったかと思うと、ラティスは急に立ち上がって部屋を出て行こうとする。
「待って!」
 神無は反射的にラティスの服の裾を掴んで引き止めた。
「……何だ?」
「その、もう少しだけ、傍にいて……?」
「……神無……」

 一瞬の沈黙の後、神無は急に恥ずかしくなって布団を被る。
「ごめん、今の忘れて!」

(うわ〜!何言ってんの、私っ)

 自分の言動に、今更ながらにパニックになる。

(絶対変な事言ったって思われた〜。きっと呆れられたよ……)

 しかし。
「顔、見せろ」
 ラティスの反応は、神無の思っていたものとは違っていて。
 ギシッとベッドの軋む音と、布団の沈み具合で、ラティスがベッドに腰掛けた事が分かる。

 ラティスのその行動に困惑しつつも、言われた通り神無は、そろそろと布団から半分だけ顔を出す。
 すると、ポンポンと軽く頭を叩かれた。
「……?」
 ワケが分からず、神無は頭にそっと手をやる。
「神無。お前が望むなら、俺はいつでも傍にいるからな」

 優しくて、そして少しだけ、哀しい笑顔だった。

 そうして後はもう何も言わずにずっと傍にいてくれて。
 それがただ、凄く嬉しくて。
 神無は人知れず、微笑った。


 神無の体調はすぐによくなり、その間に集めた情報を基に、一向はボルゲイ洞窟へと向かった。
 洞窟は砂漠の東に位置し、マグマの噴き出す洞窟として有名だった。大地を焦がす、とはまさにココを指すのだろう。

 砂漠をひたすら東に突き進むと、次第に景色が変わってきた。
 ごつごつとした岩が増え、太陽とは違う暑さを感じる。
「どうやら、目的地が近いようですね」
 神無達が一際大きい砂岩を登り切ると、目的地が見えた。

 火の珠は、あるのだろうか?